第二章 演説の天才

会見台に登壇した彼女は数秒の間をおいて口を開く。
「皆さん、ご機嫌よう。私は国家安全最高軍事司令官、ミリヤ.ノーヴェス。先程、我が国を脅かす敵対国全てに弾道ミサイルの発射、爆撃機の飛行許可、そして既に陸戦兵力の侵攻を許可した。もう戦争は始まっている。
中央諜報局最高統率官ジャイデル.ムーア局長
の力添えもあり、売国者共の国籍は判明している。ルイル共和国、グランデン、タルライナ、主にこの3カ国だ。だが、裏でアンカ合衆国の干渉も確認された。かの国もまた我らに毒を流し込もうとするならず者だ!奴等には弾道ミサイルをプレゼントしてやった。
そう言って不敵に笑う彼女、だが不思議と不快感は無かった。むしろ当然とまで感じるほどだった。再び彼女が口を開く。
奴らは既にこの国の至る所に潜み、国力の低下を、いや、我が国の崩壊を画策している!このままでは我がグルント連合は売国奴に蝕まれ、いずれ崩壊するだろう!
一愛国者としてそれは見過ごせない!
弱腰な軟弱者共は既に逮捕した!
これよりこのグルント連合の全てはこの私、ミリヤ.ノーヴェスが指揮する!
誇り高きグルント連合国民よ!
街に潜む裏切り者共を一匹残らず排除しろ!
これは聖戦だ!
勝者だけが正義だ!
我々が頂点に立つ新たなる新秩序(new order)を!
パチパチパチ!誰もいない部屋に声なき称賛が響き渡る。
そういい終わるなりテレビに自分の顔が映った。一瞬驚いたが、演説が終わったと気づくまで時間は要さなかった。
興奮冷めぬまま兵役時代の小銃を壁から外し、「もう使うことは無いと思っていたがね。」
自然に漏れ出た言葉を残し、外へと繰り出す。
狙うは国家間技術協力経済特別区
そして多国籍入国者居住区域
あそこには多くの技術者の皮を被ったスパイが巣食っている。
あの演説を見たのだろう。スパイを、反逆者を、裏切り者を根絶やしにするため、もはや狂気の殺戮集団となった国民たちが、いや同志たちが武器を片手に外へと飛び出す。
その集団に紛れて夜の闇へと消えていった。

あとがき
この章にはかなり過激な表現が含まれています。気分を害する可能性があります。
気分を害されたならこの場を借りて謝罪します。

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