曲威綱重:アマチュアラノベ作家

初めまして! 自分の読みたいラノベを執筆しております曲威綱重(マゲイツナシゲ)と申しま…

曲威綱重:アマチュアラノベ作家

初めまして! 自分の読みたいラノベを執筆しております曲威綱重(マゲイツナシゲ)と申します。 現在「魔術師と護衛士」第一章を毎日更新しております。 第二章は8月下旬から9月にかけて掲載予定です。 ご興味をもっていただけましたら、一読していただけると嬉しいです。

最近の記事

オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十八話

“念話”が切断されて少ししてから、キルシュが薬草とポーションが入った袋を手にしてこちらに向かってきた。 「いや、お待たせしたね。ボクは魔術師のキルシュ、紹介はザイがしてくれているかな。早速だけど怪我を見えてもらっていいかな?」 二人の獣人が頷くのを確認して、キルシュは診断を始める。 「これは酷いね……。全身に打撲と擦過か。よくこんな体で逃げてこられたものだ。とりあえず治癒をかけておこう」 キルシュがエーリカとシュールに“治癒”の魔法をかけると、全身についてた擦過傷がみ

    • オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十七話

      空中に飛び上がったギガントスパイダーの体に炎の槍が突き刺さったのだ。 槍の形をとった紅蓮の炎が、ギガントスパイダーの体を中から焼き払う。 「シィィィィィィィィ!!!」 悲鳴を上げて体をよじるギガントスパイダーの体に更に炎の槍が二本突き刺さり、そこの箇所から激しい火が噴き出す。 そしてその体は炎上した。 炎の塊となったギガントスパイダーの巨体は空中でバランスを崩し、仰向けの姿勢で馬車の後方に落ちる。 「ゼンケルさんゼンケルさん、安心してください。もう終わりましたよ。

      • オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十六話

        寒風吹きすさぶ冬の道を想定していたが、今の気候はとても穏やかで過ごしやすい。 キルシュの言葉に俺は頷く。 「そうですね、今年の冬はそれほど寒さも辛くない良い気候でした。作物の収穫量も悪くない様ですね」 馬車にぎっしりと積まれた木箱の中身は蕪にキャベツ、ブロッコリーにカリフラワー、人参など野菜や林檎など冬の作物が大半を占めており、これらはディリンゲンの町の市場で人気のある品として取引されている。 その他に詰まれているものは薪だ。 周囲を森で囲まれたティツ村で生産される

        • オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十五話

          「分かりました。昼食は馬車で食べられるようサンドイッチにしますね」 「それはいいね。それじゃ、後で」 居間から台所に移動した俺はサンドイッチの調理を始めた。 昨日の夕食にメインディッシュとして用意したローストビーフがかなり余っているので、これを使おう。 塊肉を薄くスライスし同じように玉ねぎも薄切りに、クレソンがあったので辛味としてこれも加える。 味付けのソースは昨日のローストビーフで使ったグレイビーソースをそのまま使う。 最後に今朝の相談者が差し入れてくれた焼きた

        オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十八話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十四話

          以前は彼らの姿はティツ村周辺でもよく見かけていたのだが、ここ一か月ほど彼らの姿を見ていなかった事を俺は思い出した。 「ディリンゲンの町の冒険者ギルドで何かあった……と見るべきでしょうか?」 「その可能性が高いとボクはみているよ」 キルシュはベンチから立ち上がり、ヴィヒタと呼ばれる白樺の若枝を束ねたものを手に取ると、それで自分の体を叩き始める。 これは体の発汗を促し血流を良くすることで疲労の回復を早める効果が期待できるものだ。 白樺には減菌作用があるので、体を清潔に保

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十四話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十三話

          辺境地域の開拓村を維持するというのは、想像を絶するほどの困難が伴う。 魔物の脅威だけではなく、盗賊など同じ人間同士でも敵対関係になる者たちからも村人を守りぬかなくてはならない。 そのためには常日頃から近隣の村や町との繋がりを深め、薪や薬草などの特産品を生産して交易することが欠かせないのだ。 それによって得た富をその地方の領主に税という形で納めることで保護下に入り、有事の際は軍を派遣してもらうことで最低限の防衛力が得られる。 勿論それだけで十分ではなく、村の治安を維持す

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十三話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十二話

          「ありがとう。それでは聞くけど、ボクたちが調査してきた範囲で、実は冒険者と思われる痕跡が村の周囲で一切見つからなかったんだよね。ボクたちが把握できる範囲の痕跡はせいぜいが一週間程度の間のつけられたものに限られるけど、実はもっと前から村の周辺で活動する冒険者たちの数が減ってるんじゃないかな?」 「先生もお気づきでしたか……。実はここ一か月ほど村から出した冒険者ギルドへの依頼が受理されないケースが増えているのです」 ため息をつきながら口にするダミアンの答えは、キルシュの仮定を

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十二話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十一話

          篝火を焚き常に誰かが入り口を見張り続けなければ、村や町など人間の生存圏はあっという間に闇に飲まれてしまう。 力もつ者である魔術師や護衛士は力無き人々のためにこそ力を振るうべしとの理念があるが、それは綺麗事でも何でもなく、そうしなければ生き残れないほど人類はこの世界に大してか弱い存在を示しているのだ。 門を通された俺たちは、日が沈み闇に包まれたティツ村の中に歩みを進める。 村長であるダミアンの家は、村の北西の少し小高い丘になった場所に建てられている。 これは村長が有事の

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十一話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十話

          ヴァンキッシュのうちの一体の体に直撃したそれは、轟音と共に爆ぜ、激しい火炎を辺りにまき散らす。 隣にいたもう一体のヴァンキッシュも炎に巻き込まれ、二体とも強烈な火傷を負ったようだがまだ死んではいない。 体を焼く炎にもがき苦しみながらも、地面に体を転がし床の水たまりを利用して炎を消そうとする。 さすがに図体がでかいだけあって、かなりの耐久力があるようだ。 しかしこれだけの時間が稼げれば、俺がヴァンキッシュの側にたどり着くまで十分だった。 この洞窟の床が濡れてすべりやす

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第十話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第九話

          ヴァンキッシュの首がいかに分厚かろうと所詮は肉と骨。 両断することの障害にはまったくならなかった。 首を落とされたヴァンキッシュは、首から血を吹き出しながら地に倒れ伏す。 一匹目の首を落とした俺は、勢いをそのまま返す刃で倒れた個体の隣にいる二匹目のヴァンキッシュに狙いを定め、その頭蓋を剣で刺し貫く。 漆黒の剣先は易々と表皮を突き破り、その中にある頭蓋骨をも貫き、最後に脳へと達した。 ヴァンキッシュの瞳が濁り生体反応が停止した事を確認した俺は、頭蓋から剣を引き抜くと、

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第九話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第八話

          「さぁてどうかなぁ……。どちらもいるというのが最悪な答えだけどね」 ヴァンキッシュは動物の内臓を特に好んで食べる性質があり、他の部位は余程腹を空かせていない時を除いてそのまま放置する。 毒液を吐きかけて、痛みで動けなくなった獲物の腸を喰らうのが連中の習性だ。 しかしヴァンキッシュの群れが一度に喰らう量は通常イノシシにして一、二頭ほど。 しかしここで殺されているイノシシは数えただけで四頭、ライナーが家にもってきた死骸を含めれば五頭になる。 恐らくこのイノシシたちは群れ

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第八話

          オリジナルノベル 魔術師と護衛士 第七話

          「まぁ、少数ではあるけどボクのような変わり者もいるけどね。人間の文明に魅了され、交わってみたいと思ったエルフもいた。人間はエルフに比べれば十分の一にも満たない本当に僅かな一生だけれども、だからこそ激しく鮮烈に自分の一生を、生きた証を世界に刻もうとする」 ザクザクザク。 赤、黄、灰色。 色鮮やかに染まった落ち葉がまるで絨毯のように広がる森の地面を、俺たち二人は踏みしだいて進む。 「ボクたちエルフには想像ができない生き方だ。長い時があるゆえにエルフは焦ることを知らない。時

          オリジナルノベル 魔術師と護衛士 第七話

          オリジナルノベル 魔術師と護衛士 第六話

          そして相棒と言える俺のメインの武器は壁に立てかけてある両手、片手両用の大剣バスタードソードだ。 斬ることも突くこともできる万能タイプの剣で、重武装の相手には片手による刺突で、軽装の敵は両手で持ちパワーで薙ぎ払う。 取扱いにそれなりの筋力と修練を要するが、それに見合うだけの価値がある武器だ。 このバスタードソードは刀身に柄、はては鞘にいたるまでが全て漆黒に染まっているがこれは別に俺の趣味というわけではない。 最後にハンガーにかけてあるマントを羽織ろうとしたとき、扉の外か

          オリジナルノベル 魔術師と護衛士 第六話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第五話

          「はい」 俺は居間の片隅に筒状に丸めてある羊皮紙の地図を手に取り、テーブルの上に広げた。 ティツ村を中心にしたザールラント地方の地図だ。 キルシュが村から北西にある森を指さした。 「ライナーさんがこの死骸を見つけたのは、この森?」 「へぇ、よくお分かりで」 「このあたりは森はドングリが実るナラの木が多いからね。それを餌にする小動物やイノシシなどをはヴァンキッシュたちにとってご馳走になる。その付近で暗くジメジメしていて、水が多い場所が候補地なんだけど……」 「ふむ

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第五話

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第四話

          なぜかと言えば、ポーションは使い方を誤れば使用者にとって命取りになりかねない劇薬だからだ。 薬草は薬効成分をもつ植物のことをさすが、それだけですべての病気や怪我を癒せるわけではない。 ポーションはそれらの治療を可能にする。 当然等級が高い方が効果が高いのだが、その分体力も大きく削られる。 体力が有り余っている若者であればそれほど心配はいらないが(とはいえ特級ポーションを使えば体力自慢の十代の若者でさえ数日寝たきりになる場合がある)、幼子や老人など体力が少ない者が使用す

          オリジナルラノベ 魔術師と護衛士 第四話

          魔術師と護衛士 第三話

          「ええ、最近膝が痛くてね……。寒くなってきてから特に酷いのよ」 なるほど、引きずるほどではないが確かに左足の動きが鈍いようだ。 「それはよろしくないですね。さ、どうぞ中へ」 玄関の扉を開けて、俺はデボラを家の中に招き入れた。 中では穏やかな笑みを浮かべて椅子に座っているキルシュが出迎える。 「やぁ、デボラさんいらっしゃい。今日も素敵だね」 「もうやだわぁ先生ったら。いつでも透き通った肌に綺麗な顔してて、あたしたち女より綺麗な男の子なんだもの。先生がそんなこといって