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地方の特産品を海外からの観光客に売る3ヶ条

1.はじめに
2.日本の現状
3.海外観光客にお土産を売るための3ヶ条
4.諸外国の取り組み~観光先進国のお土産開発スキルに学ぶ~
5.まとめ


はじめに

本来、今回noteで書くような内容は、私が契約しているクライアントさんに口頭でお伝えするのみである。
しかし、日本市場を見渡すと、半年後にオリンピックというインバウンド的には最大のビジネスチャンスを控えているにもかかわらず、あまりにも基礎を理解しないまま作られている商品が多いと感じたので、最低限のポイントをまとめることにした。この内容を実践するだけでも、商品を手に取ってもらえる土台はつくることができるので、ぜひ参考にしていただきたい。


日本の現状

先日、海外からの観光客もそこそこ多い地方都市に行った。その際、次回の海外出張に持って行くお土産を買おうと思い、地元で製造している賞味期限が長めのお菓子を物色した。
そこで、ほとほと途方にくれてしまった。商品自体のお味がいいにもかかわらず、海外に持って行こうと思えるお土産が、ほとんど無いのである。

理由がおわかりだろうか?

パッケージの表記が日本語のみで、中身に何が入っているのかまったくわからないのである。日本語がわからなければ、食べ物かどうかの判別がつくかすら怪しい状況である。
お土産を売っている人たちには、まず考えてもらいたい。
日本語が一切わからないと仮定した場合、自分たちが売っている商品が何なのか想像できるかを。
(ちなみに、ものによっては、日本人の目でパッケージを見ても中身が想像できず、お土産に買って帰ろうと思えない商品もあった。恐らく、地元で昔から有名な商品なので、わざわざ説明しなくてもわかると考えてしまっているのだろう。)

店頭のPOPや試食でわかるという方がいらっしゃるかもしれない。
POPや試食があれば、確かに買った当人は中身が何なのか理解できる。しかし、実際にお土産をもらうのは第三者なのだ。自分の目で中身を確認していない未知のものを、喜んで口にするだろうか?日本マニアであればありがたがってくれるかもしれないが、大抵の場合はいぶかしく感じて、おそるおそる試すのみだと思う。
また、お土産を買った当人が、詳しく内容品を説明できるとは限らない。そういった点からも、パッケージを見れば中身の判別がつくことは、食品をお土産にする場合の必要最低条件だ。

私がお土産を買っていく場合、あげた相手が家族や友達と食べることを仮定している。
ゆえに、私のことを知らない人に安心して食べてもらうためにも、パッケージを見れば理解できる商品であることが必須なのだ。

例を挙げるが、あなたがロシア語や他のスラブ系言語を知らない場合、わざわざ下の写真にあるような商品をお土産に買おうと思うだろうか?

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この商品の隣で、英語が入っている似たような商品を売っていれば、そちらを選ぶのではなかろうか?

私が言いたいのは、そういうことだ。


海外観光客に日本の食べ物を買ってもらうための3ヶ条

私は食品の専門商社で10年以上商品開発に携わってきたが、輸入食品を日本の小売市場に導入する際、気を付けていたことがある。
それは、その商品が何なのか、初めて手に取った消費者が瞬時に理解できるようにしておくことだ。
具体的には、以下のような手段を取ることである。
 (i) 商品前面に日本語で商品名を表記する(シール対応でも可)
 (ii) パッケージの1部を透明にして、中身が見えるようにする
 (iii) 上記2点に対応するのが難しい場合は、商品の写真やイラストをラベル前面に入れる
 (iv) 上記3点がどれも難しい場合であっても、販売者ラベルに必ず商品説明と食べ方を日本語で入れる

これは、外国人観光客に日本の加工食品を買ってもらう場合でも、まったく同じだ。
具体的には、以下の点については最低限守らないと、一般的には手にすら取ってもらえないという事態になりかねない。

★パッケージ前面に、英語で商品名を入れること。(商標ではなく、一括表示の名称に記載するような一般的な品名を書くことがポイント。)
★中身が見えるようにすること。透明にできるなら透明、できないなら商品写真を前面に入れる。
★パッケージ裏面でいいので、英語で商品の説明と食べ方を書くこと。

これらを守ったからといって売れるようにはなるとは限らないが、少なくともこれらを守らないとお土産候補としてすら認識されない。
ゆえに、ターゲットが外国人観光客であるなら、まずはこれらを実行に移すべきである。
パッケージの在庫が大量にあるので、パッケージを変えるのはすぐには無理。そんな時は、英語の商品名をシール貼りするだけでもいい。全くやらないよりは、少しでもやったほうがマシである。

私は複数外語を使う人間として、英語偏重の表記は好きではない。しかし、英語で記載しておけば、自動翻訳を使う場合もスムーズなのだ。誰もチェックできない言語をいくつも表記するよりは、たとえ一か国語のみの外語であっても、内容が正しいと判別できる英語できっちり表記しておくべきと考える。


諸外国の取り組み
~観光先進国のお土産開発スキルに学ぶ~

余談だが、私が直接訪問した世界中の都市の中で、お土産開発スキルが一番高いと評価しているのはイギリスのロンドンである。一年中観光客が絶えないパリ、ヴェネツィアなども、そこそこ魅力的なお土産があったが、ロンドンのレベルの高さは他都市と一線を画していると言わざるを得ない。しかも、英語が公用語なので、包装されている商品で合っても内容品が簡単にわかる。これも強みだ。
デザインのおしゃれさ、ロンドンに行ってきたことがそれとなくわかる控えめな主張、販売品目はそれほど多くないところディスプレイで魅力的に見せる手法、各観光スポットが競い合ってそれぞれ違うものを売り出している割には全体的に漂う統一感、どれをとっても、観光客として訪問したからにはお土産を買いたい気になる。家族や友人へのお土産だけでなく、自分自身の記念にほしくなるものが多いのも、高評価をつける理由だ。
安いわけではないものにお金を出したいと思わせる、その手法を知りたいと思ったら、一度ロンドンを訪れてみることをお勧めする。

まとめ

昔から日本に来る外国人に言われることのひとつに、「スーパーで買い物をしたいけれど、何が何なのかわからなくて買えない」というものがある。
今回のお土産の話ともリンクしているが、「中身さえよければ売れる」、「昔からこのパッケージだから、今後もこのままで大丈夫」と思ってしまっている商品があまりにも多いと感じる。
外国からの観光客にとって、日本語は何も意味をなさない記号と同じだということを認識し、わかりやすいパッケージづくりを心掛けてもらいたいと思う。

衰退している国内産業が多い昨今だが、海外をターゲットに販売戦略を一新して、売上げが回復できるような商品が増えていくことを切望している。

(2020年1月22日・Naoko Tamura)

※個別の商品開発やブランドの海外進出、インバウンドビジネス、海外観光客を迎える施策などについてのご相談は、プロフィールにある私のHPへのリンクからお願いいたします。


<プロフィール>
Naoko Tamura

貿易&食品ビジネスのコンサルタント。
14年にわたる商社勤務を経て、2012年2月に独立。長年現場で培った経験を踏まえ、日本と欧州各国を往復しながら、国内外の輸入卸商社や食品生産者、イベント企画会社のアドバイザーとして、日本と海外の会社の取引を円滑に進める助言や、国内外の市場での新商品開発・販路開拓・マーケティングのサポートをする。
法人だけでなく、海外事業やキャリア形成に関心がある個人事業者向けにも、コンサルやセミナー実施実績あり。
東京外国語大学イタリア語学科卒業。アメリカ、スペインに長期留学経験あり。東京都在住だが、1年の1/4ほどはイタリア~東欧~ロシアあたりに出張している。
ホームページ・・・ https://faruljapan.com/

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