4足歩行ロボット「Usampo 02」開発ストーリー
みなさん、こんにちは!ファーロスターnote編集部です。
開発を進めていた4足歩行ロボット「Usampo 02」のストーリーをまとめましたのでご覧ください。
Usampo 02 のおさらい
Usampoとは4足歩行ロボットの開発コートネームのことで、「うさんぽ」と呼びます。
02とは歩行試験用の機体で、01試作機(モックアップ)の進化版となっています。
02では様々な走行試験を行いました。
構想の発端
2022年3月16日、ドローン衝突回避実証試験のため、福島県南相馬市のホテルに滞在中、震度6強の地震に遭遇し、社員4人が被災しました。ケガなどありませんでしたが、実証試験を中止することになりました。
この時に道路は寸断され、第2の東日本大震災の発生かと思いました。
この時は社員の安全確保のために、一時帰宅することに。しかし、被災地から避難できる私たちと、避難先のない方々のことを考えると居ても立っても居られず、器材を積み込むと南相馬市に向かいました。
道路が寸断されているため入ることができない場所があり、歩くしか方法はありませんでした。このような場所に荷物を運べるロボットがあればと思ったのが開発のきっかけとなりました。
構想
ファーロスターが考えるロボットは、次の場所で活躍することを前提としました。
それは、不整地です。階段や瓦礫も含みます。
また、荷物を運ぶことを前提とし、
・災害時に役立つこと
・人の代わりに荷物を運べること
を目的としました。
これらを体現するための構想策定に時間をかけました。
イメージの作成
構想が固まり、設計へと進んだのが2022年12月になっていました。
先ず、イメージを作成して方向性を社内で共有しました。
そのイメージを基に機能を詳細化し、設計へとつなげました。
設計とアルゴリズムの作成
基本機能を基に設計したものをアルゴリズムに落とし込みました。
この基本的なアルゴリズムが完成すると、アルゴリズムの動作を確認するためのシミュレーション解析を実施します。
シミュレーション解析と修正
シミュレーション解析では様々な状況をシミュレートして行きます。
走行方法、挙動の確認、足の向きなどをシミュレーション解析し、ある程度煮詰めたら、今度はモックアップを試作します。
モックアップの作成
設計した事項をモックアップに反映していきます。今回は、木を用いて組み立てました。強度が弱く、破損することもありましたが、基本的な要件を確認することができました。
動いた時はとても感動しました。また、ぎこちない動作に愛着さえ湧いたことを覚えています。
02デザインの最終化
モックアップから実機を作成するには、デザインをレビューする必要がありました。当初の計算よりも関節部を強化する必要があり、デザインを変更しました。
それがこちらです。
3Dプリントによる筐体の作成
次の工程は3Dプリンタによる筐体の作成です。厚さ、素材の強度を考慮してプリントしました。
実際にプリントしたものが次の写真です。
想定よりも重くなり、削って加工してフィッティングさせて組み上げました。
基本動作試験
02号機はコントローラーを用いて操縦することができます。今回はPS4のコントローラーを使いました。
基本動作として次の試験を実施しました。
伏せ(足を格納した状態)
伏せから立つ
前足を延ばし、後ろ足を閉じる(/)←こんな感じ
右肩を上げ、左肩を下げる
立つから伏せる
初めて動いた時には感動しました!
走行試験
基本動作試験で調整をし、次に走行試験を実施しました。
前に歩く
後ろに歩く
横向きに歩く
左(右)に曲がる
アライメント調整が進むに連れて歩けるようになってきました。
子どもの成長を見ているような感覚になりました。
バランス試験
背中に荷物を載せることを想定し、坂道でも荷物が水平に保てるようにバランス試験を行いました。
今回はセンサーを使わず、独自のアルゴリズムで背中の水平を保つというチャレンジも加わり、難易度の高い挑戦となりました。が、エンジニアは難なくクリアするなどびっくりすることばかりでした。
恐らく世界ではじめての試験です。
試験中は冷や汗が止まりませんでした。
結果
試験は全てクリアし、02号機の機能を実証することができました。
そして次のステップに進みました。
Aiを用いた自動追尾
本来は上記試験で終わるところでしたが、イークラウドを通じた資金調達のおかげで次のステップに進ませていただきました。
Usampoと同時期に開発していたニューラルネットワークを用いたAi映像解析エンジン「Rabbit Eyes 1.0」が完成し、Usampoに搭載することになりました。
それが、「Usampo 02改」です。
Ai映像解析エンジン「Rabbit Eyes 1.0」
ニューラルネットワークを用いたAi映像解析エンジン「Rabbit Eyes 1.0」は映像から得られる情報を6つの領域で活用可能となっています。
「動体検知」、「物体識別」、「動体追従」、「空間把握」、「距離測定」、「位置推定」
Usampo 02改では、衝突回避、追従、検知を実現しました。
Usampo 02改からどのように見える?
Usampoにはカメラを搭載し、動体検知、物体識別、距離測定を同時に計算させています。このことで対象物(人)を認識し、対象物との距離を一定に保ち対象物を追従することを実現しました。
能登半島地震発生!開発を急がなければ!
開発を進めている中で、2024年1月1日16時10分に能登地方を震源とする最大震度7を記録する能登半島地震が発生しました。被災された方々にとっても、また、ファーロスターにとっても辛い出来事となりました。「災害時に活躍するロボットを作る」という思いで開発を進めていましたが、まだ完成していないことに深く心を痛めました。問い合わせも多かったのですが、Usampoが導入できる段階にないとわかると落胆されることもありました。
このことを受け、ファーロスターが開発している方向性は間違っていないと確信し、開発を加速させると決意しました。
特に、不整地において20~40kgの荷物を数キロ運ぶ必要があることがわかり、開発目標を修正することになりました。
資金調達を充実させ、技術者を確保して最短のリリースを目指します。
今年の開発方針
現在、転倒回復試験用03号機の開発を進めており、3月末に試験を開始する準備を進めています。
また、秋口までに階段・不整地歩行試験機04号機を開発する計画です。
01~04号機で検証した技術をまとめ、量産開発機の05号機を年内に開発を完了し、リリースしたいと考えています。
資金調達の状況によりますが、これまでの計画を早めて開発し、お役に立てる機体を提供できるように準備しています。
現在、資金調達を進めていますので、ご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひお声掛けください。
次の災害は待ってくれないという現実を強く認識し、準備を進めて参ります。
最後に
ファーロスターは、災害が人々の生活を脅かすことを深く認識しています。そのため、Usampoの開発を通じて、人々が災害から安全に避難できるように、また物資の搬送面で支援できるようにすることを目指しています。
私たちは、技術の力で人々の生活をより良くすることができると信じています。そして、その信念が私たちを前進させ、新たな挑戦に向かわせます。
これからも、私たちの取り組みをご支援いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?