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生きる手応え、について思うこと

昔、ジブリ作品の『かぐや姫の物語』を見たときに、この「生きる手応え」というセリフだけが、ポーンと心に残りました。多分、その時期一番欲しいと思っていながら得られずにモヤモヤしていたものの正体だったから。当時の私には「生きる手応え」がありませんでした。

その頃、仕事はそれなりに責任のある立場を任せてもらえていたし、自分のしたことが役に立ったり、喜んでもらえればただただ嬉しかった。仕事が好きだったので遅くまで働くこともそれほど苦ではなく、遅くなれば外食して美味しいものを食べたり飲んだりしていました。外から見れば、それなりに充実しているように見えたかもしれないけれど、やっぱり「手応え」がなかったのです。

仕事は他者貢献。自己表現でもあるのだけれど、やはり誰かに貢献することで初めて対価を得ることができます。だから、仕事をするときはまず、相手が何を望んでいるかを考えます。自分はこうしたいと思ったことがあっても、お客様やクライアント、上司の要望に合わせて、修正を加えながら提案をしていきます。

子育てをしている方も、金銭的な意味での対価はないかもしれませんが、これも立派な仕事だと思います。私は元教員ですが、子どもを育てることは体力的にも精神的にもかなりハードですが、同時に喜びもあり、やりがいのある仕事です。しかし、あくまで他者貢献です。自分の子どもであろうとなかろうと、子どもはやはり他者であるからです。

他者貢献としての仕事に取り組み、その仕事がとても好きで「生きる手応え」を感じられている方も多いと思いますし、そんなことを考える暇もないほど、ガンガン仕事をされて充実した人生を送っている方もいらっしゃると思います。いずれにせよ、他者に必要とされる、役に立つということは尊いことで、喜んでもらうことで自身にも喜びが生まれ、成長をもたらし、自己肯定感を高めてくれるものだと思います。

ただ、他者は自分の思い通りにはなりませんし、思い通りにしてもいけないものです。「生きる手応え」を他者だけに求めていた場合、失うこともある、永遠には続かない、ということは確かであるように思われます。

さて、「生きる手応え」を不確かな他者や自分の外側に求めるのではなく、コントロールすることが可能な「自分の内側」に求めることはできないでしょうか?他者にしているのと同じように、自分で自分に貢献することで「生きる手応え」が得られないか、と考えてみます。「手」を動かして、自分に「応え」る。「自愛」と考えても良いかもしれません。

当時の私を思い返すと、随分自分に「手厳しい」対応をしていました。そもそも24時間のうち、(本当の意味で)自分のために使っている時間がなかった。仕事終わりの晩酌はとても好き(今も好き)ですが、結局眠りを浅くして翌朝になっても疲れが取れていませんでしたし、食事も好きなものを食べていましたが、食後に胃もたれするようなものもたくさん体に入れていました。それに、自分に対しては大して「手」も動かさず、お金を払って簡単に手に入るものを消費するばかりでした。また、自分に応えるどころか、内側の声を聞こうともせず、基準はいつも他者、会社、世間だったと思います。

この後、しばらくして健康診断で不調が見つかるわけですが、ご自愛できていない私は、結局、人の役に立つことなんて大してできていなかったのかも、と反省もしています。

さて、今の私がご自愛上手になれたか、生きる手応えを感じられているか、というと、まだまだ修行中です。コロナ禍で、自分のために使える時間はかなり多くなりましたし、アーユルヴェーダの知恵が、自愛のヒントを与えてくれています。アーユルヴェーダでなくても、世の中には様々なセルフケアや自愛の方法を紹介していますが、どの方法を試してみてもいいと思います。ただ、アーユルヴェーダにしても、世間で言われている様々なHow toにしても、自分の内側の声を聞いて、鵜呑みにせず、本当に自分にフィットしているのかどうか識別していくことが第一歩ではないかなと感じます。そして、これだ!と思えば、そこを深く掘ってみる。私にとってはそれがアーユルヴェーダやヨガだったりしますが、それでももう一人の私が常に「本当にそれ、いいの?ちゃんと試してみた?」と冷静な声で囁いてきて、試行錯誤の毎日です。ちなみに、東洋医学は、アーユルヴェーダ、中医学や漢方医学、韓医学などありますが、掘り下げると結局同じところに行き着くそうなので、あれこれ試すよりは、まず軸となる一つの分野を選択し、深く掘り下げていくのがいいかもしれません。

ここまで長文を読んでくださり、ありがとうございます。人は、生まれながらに全て備わっていて、「今ここ」で呼吸をしているだけで幸福を感じられるはずの存在だそうです。窓の外の生き生きとした木々を見ると、それができていないのは人間だけでは、という気がします。皆様にとって、生きる手応えとなる素敵なご自愛方法が見つかりますように。



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