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「自分から見えるものだけが真実とは限らない」と気付いた日

こんばんは。昨日の睡眠不足のせいか、肌がいつも以上に荒れまくっています。数日前に生まれた吹き出物たちが順調に育っていて、今や私の顔面は吹き出物養殖場と化しています。つらい。

さて今回も意味深なタイトルを付けてみましたが、察しのよい方なら既にお気付きでしょう、内容は薄っすーいです。今朝のお風呂あがりに唐突に思い出した私の昔話をします。語れるべき今がないと過去を振り返りがちです。

小娘、取材を受ける

20年以上も昔の話ですが、小学生の時で確か小3か小4くらいの頃に一度、雑誌の取材を受けたことがあります。

当時出版社に勤めていた母方の親戚から、「旅行系雑誌の中で子ども達にインタビューする企画があるので、すーちゃん(私)にも参加してほしい」という旨のオファーが私の母宛てにあったようです。母が私の了承を取ったのかそれとも勝手に話を進めたのかそこら辺は忘れましたが、気付いたら東京都心の高層ビルの前に母と並んで立っていました。

ド田舎育ちの私がおめかしワンピースを着せられ、普段乗らない電車を乗り継いで大都会にやってきた。親戚の方の案内でビルの中に通される。外から見たらガラス張りの建物だったけど、中もすごくキレイ。
緊張と、「私が雑誌に載るんだ!」という期待が入り混じる。テレビに出ているアイドルや芸能人みたいに私もちょっと有名人に、なっちゃったりして…と、妄想が膨らみました。


通された部屋に入ると、既に他の女の子や男の子たちが長テーブルを囲んで座っていました。自分と同じ年齢くらいの子や少し年上と思われる子、自分より小さい子…私を含めて6人くらいの子どもが揃いました。
インタビュー中、親は別室で待機ということだったので、部屋の中には子どもたちと出版社の方2人だけ、という形に。

それで早速インタビューが始まったのですが、私を含めた子どもたち全員、緊張でガッチガチな状態でした。
質問に対して、うーん、とか、言葉に詰まったりしながら、ひとことふたこと発するのがやっと。それに対してインタビュアーの方がさらに2、3の質問をして、また返事が返ってくる。それが終わると今度は隣の子の番になって、同じ質問や少し違う質問をされて、それに返事があったらさらに突っ込んだ質問が来て…というサイクル。インタビュアーさんと答える子、の1対1で進行されていました。

ちなみに、インタビューのメインテーマは「海外旅行に行った時のことを聞かせてください」
今までどこに行ったことがあるか、何回くらい行ったのか、どんなホテルに泊まったか、飛行機はどうだったか、何が一番楽しかったか…などを聞かれた記憶があります。

インタビューも中盤になってくるとみんなの緊張も少しほぐれてはきたものの、基本的に進行は変わらず、インタビュアーの方から1人の子に対して質問する形式でしたし、子どもたちの受け答えはちゃんと敬語でした。みなさん(私を含めて)たいへんお育ちがよろしいようで。

その日は無事にインタビューが終了し、子どもたちはひと安心。雑誌ができたら送るからね、と親戚の方から言われ、私はウキウキで届く日を心待ちにしていました。


小娘、いざ雑誌デビュー

数ヶ月後、出来上がった雑誌が家に届きました。ついに私の、弱冠10歳にして満を持しての雑誌デビューの日。母と二人でワクワクしながらページをめくっていくと、あった!雑誌の真ん中あたりに記事を発見しました。

計4ページほどの記事の中に、私を含めた子どもたちの写真が掲載されていました。自分の写真映りにはちょっと納得がいかなかったけれど、それよりも「雑誌に載った」という喜びが大きく上回りました。

どれどれ、インタビューの内容も見てみよう…と文字の方に視線を移した時、私より先にインタビュー内容に目を通したらしい母が大笑いし始めました。え、何何なになに、何が書いてあるの??と大急ぎで読み始めた途端、私は思わず目が点になりました。


そこにはこのように書かれていました。


(私の名前)「ハワイの一番はやっぱりプール!プールが最高だったら、1日に何度でも入っちゃう♪」


小娘、ショック

ちょっと待て。私あの時、緊張ガッチガチだったんですけど。そんなくだけた感じで話せてないですけど。自分なりにだけど、ずっと敬語で喋ってましたけど。こんなタメ口、利いてませんけど。語尾に「♪」マークなんて、絶対に付いてなかったと思うんすけど。

「こんなこと喋ってたのー!おっかしー!」と横でゲラゲラ笑う母を無視し、インタビュー記事を読み進める。読めば読むほど、濃くなる違和感。

文面から想像できるのは、子どもたちとインタビュアーさんとで会話が大変盛り上がり、時には笑いも起きるほどの光景。
記事の中では子どもたち同士が打ち解けてお互いに会話していたし、時々「そうそう!私も〜」みたいに同意してたりもする。
フランクな雰囲気でざっくばらんな座談会!みたいな設定になっているので、台詞からは敬語なんて取っ払われて、全員がもれなくタメ口になってました。きっと何も知らない大人が読んだら、「いっちょ前にモノ申すとは、なんて生意気なガキ共なんだ」と思ったに違いありません。

あまりに実態とかけ離れた記事に、当時は大人の都合だの事情だのそんなん知ったこっちゃないので、私はただただショボくれてました。
雑誌を読む前は学校の友人たちに「今度わたし雑誌に載るんだぁー♪」なんて得意気に喧伝して周ってたような気がしますが、雑誌が世に出回ってからは「ハワイのプールが大好きな、おしゃまなわたし」の設定が友人たちにバレるのが恥ずかしくなってしまい、すっかり大人しくなりました(記憶の上では)


小娘、悟る

この経験から私が学んだことは、「雑誌に載っている芸能人のインタビューも、実際のところは記事の通りではないかもしれない」ということです。

天真爛漫なキャラが売りでインタビューはタメ口で答えているあのアイドルも、実際には礼儀正しい受け答えをしているかもしれないし、
逆もまた然りで、清楚で可憐なイメージの美少女タレントも実はものすごく態度が悪いのかもしれない。

誰かが発した言葉が、加工され修正され、フィルターがかけられ、受け手のもとに届く時には、180度違うものになっている可能性だってある。
自分から見えるのがその人のある一面だけだったとしても、そこからその人のすべてを判断することはできない。自分からは見えない、自分の知らない別の面が、きっとたくさんあるはずだから。もちろん全ての面を知ることはできなくても、「こういう面もあるのかもしれない」と想像することはできる。

世の中に、そういうことってきっとたくさんある。有名人じゃなくたって、自分の身近にいる人たちだって、きっとそうだ。


なーんてな

…なんて小難しいことを当時の私が考えられるはずもないです。カッコつけて語ってしまいました。1ミリくらいは反省しています。

まあでも世に出回っているこういう出版物とか、テレビ番組もそうだと思いますけど、制作側が編集とかすごくたくさんやって手直しもしまくってようやく我々の手元に届いてるんだろうなっていうのが分かる貴重な経験にはなりました!

大昔の旅行雑誌の真ん中ページあたりで、茶色いヘアバンドに昔の松潤のような立派な眉毛をした女児が「ハワイ♪」とかほざいてたら、それ、私です。