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今ならフラれる学生時代の貧乏デート

大学時代はとにかく貧乏だった。
床のきしむボロアパートに住み、外食せず業務スーパーとお友達になりながら自炊して、夏場はガスを止めて生活していた。

毎月のバイトは、最低限の生活費と学費のぶんだけで、それ以外はサークル棟に顔を出してその時にいるメンバーとゲームしたり漫画を読んだり、だらだらして、まかないや廃棄をもらっては自宅の冷蔵庫に冷凍し、少しずつ解凍しながら過ごす、そんな大学生活だった。

彼女ができても当然お金がない。都会に出かけるにはお金がいる。何せ電車にすら数か月乗らないこともザラだったので、とにかくお金のかからないデートをしていた。

100均でフリスビーやゴムボールを買って公園で遊んだり、港で缶チューハイ片手に対岸に映るビルの航空障害灯を眺めて他愛もない話をしたり、曲がり角で直進できないルールで目的地まで歩いたり、地下鉄の1日乗車券を使って知らない駅を散歩したり、大人になれば「たまにはそういうデートもいいよね」と思うかもしれないが、これが常だった。

「たぶん興味ないと思うんですけど、来週ってクリスマスなんですよ」
と1つ年上の彼女からため息交じりに敬語でこう言われても、
「おう、そうかそうか。来週と言えばM-1だな、今年はブラマヨがいくんちゃうか?」
とどこ吹く風で、クリスマスにキムチ鍋をつつきながらM-1を見ていたこともあった。
(一応言い訳をするとプレゼントは買った。クリスマスディナーをするお金がなかっただけだ)

でもなぜか、街に出て買い物したとか美味しいものを食べたというデートよりも、知らない街を散歩していた時に見つけたおかしな店とか、休憩していた公園でハトにアフレコして喋っていたとか、そういうことの方が鮮明に覚えていたりもする。

学生時代の友人に会うと「お前はとにかく苦学生だったもんな」とよく言われるが、そのたびに僕は「貧乏だったけど、まああれはあれで楽しかったよ」と答えている。貧乏も工夫次第では楽しく過ごせるのだ。

だからだろうか、僕なんか足元にも及ばないほどの倹約家であるオードリーの春日さんがプロポーズに贈った言葉がすごく好きだ。

好きな人を一生、幸せにする覚悟が生まれるのに10年も掛かってしまいました。
長い間、待たせてごめんね。これからも携帯をいじって、ハイボールを飲んで、寝るだけかもしれないけど、焼き肉は絶対に食べ放題かもしれないけど、誕生日プレゼントは中古かもしれないけど、ただ温泉に行くとき、たまには特急に乗りましょうか。

この先の普通の日を、一緒に普通に過ごしたいです。

TBS系『ニンゲン観察バラエティ モニタリング3時間SP』

今でもふと、鳥貴族で何回目かのおかわりをしたキャベツを、淡麗の大ジョッキで流し込んでいたあの時を思い出す。

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