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【第一話】アイノカタチ

僕と妻が結婚して約11年。
妻は今年で8歳になる長男を妊娠した事をきっかけに仕事を辞めた。
その後、長女を授かったことで妻は仕事から遠のき専業主婦を続けてきたのだった。
「共働き」に関して話し合ったこともあったが妻の「子供達が手が離れるまでは成長を側で見届けたい」という意見を尊重した。 

僕「手が離れるか、、、相当先の事だなぁ」

などと考えながらも家族4人でなんとかギリギリ(時にアウト)でやりくりをしてきたが、先日ついに待望の瞬間を迎えたのだった。

仕事から帰宅し遅めの食事をしていると

妻「話があるんだけど」
 僕「ん、どしたの?」
 妻「家にいながら仕事を始めようと
   思うんだけど、、」
 僕「(キターッ!) 本当!?全然いいじゃん!
   で?なにするの?」

妻「えっと、魔法を使ってね、
   色々とみてあげようかと思ってる」

 僕「・・・・マホゥ('ω')」



奥様いきなりの魔法発言。
魔法なんそれ?古代の話?
嘘、偽り無しの正真正銘令和の話。
過去と現在、そして未来を繋ぐドキュメンタリー?それともバラエティー?
ではでは、話を本編へ戻し、
奥様の魔法発言より時を遡ることにしましょう。それは2人が出会ったばかりのお話、、、。


20代だった僕と妻は某施設内のレストランに勤務していてそこで知り合った。妻は「ホールスタッフ」として先に在籍し、僕が後から「キッチンスタッフ」として在籍した。

某施設内のレストランということで在籍するスタッフ数はとても多く「ホール」と「キッチン」のスタッフ同士が接する機会は極めて少なかった。
同じ店だが名前のわからないスタッフも沢山いる、そんな職場環境だったが僕らは廊下ですれ違うわずかな挨拶やお互いの働く姿を遠目で見たりして、意識をしていった。
意識をしだしたタイミングもほとんど同じだったと思う。
そして僕らは連絡先の交換した。
その結果、お互いが意識をしていることがわかった、恋愛における最強ステータス「両想い」状態、そうなると何事も時間は掛からなかった。
はじめてのデートをした当日に告白し交際を開始した。

「両想い」というラッキー、それ以上に驚いた事があった。
僕らの「趣味」「感性」「価値観」が限りなく似ているという点だった。

「趣味」が合うことは決して珍しいことではなく、むしろ恋愛する上で重要なポイントになってくるものだと思う。
僕らの場合は「映画」や「ゲーム」、「マンガ」といった趣味の共通点があったが特に大きかったのは「映画」の存在だった。
付き合ってからは2人で沢山の映画を観ることになる。そして、初めてのデートももちろん映画鑑賞だった。
初めてのデートで観る映画のチョイスはとても重要だと思うが選んだ作品は『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』だった。
これは妻からのリクエストもあった。
初めてのデートを抜きにしても『インディ・ジョーンズ』を熱烈に観たいという女子がいる事に驚いたが、妻は他にも『スターウォーズ』や『ロードオブザリング』、『ハリーポッター』などの映画作品が大好きだったのだ。
僕は若くしてアメトイにハマり、アメトイショップに通い、そしてショップスタッフ経験まであった、まさに専門分野でしかない。
「両想い」からラッキーが続いた。
クリスタルスカルはオーパーツとして本当に世界に実在するという都市伝説仕込みの小ネタも用意してデートを迎えたのは良い思い出だ。

ただし、そんな妻でも1つだけNGのジャンルがあった。
それが「ホラー」だ。
僕はホラー映画がTVで垂れ流しになっているような家で幼少期を過ごしてきた。
この幼少期の記憶はトラウマを超越し、むしろ好んでホラー映画を鑑賞するにまで立派に成長をした。
しかし妻は一切「NG」。
とは言えホラー作品が観れなかったとしても観れる作品は沢山あり僕らはなんら困ることは無かった。

そして「感性」と「価値観」についてだ。
「趣味」と同様に恋愛における重要なポイントだが「趣味が合う」という事に比べればこの2つは少しハードルが上がる気もする。
わかりやすく言うと「喜怒哀楽」が同じポイントだということだろうか。
僕達はこの「喜怒哀楽」のポイントが同じというのはもちろんのこと、もっと些細な事に関しても同じように感じることが多かった。
「シンクロ」とでも言うのだろうか。
文字に起こしてみるとなかなか凄そうには感じないのだが、このことで2人の距離は縮まり「信頼感」や「安心感」が生まれていった。そして僕にとって妻がとても特別であるという感情も生まれてきた。

ここから少し恥ずかしいノロケ話になるのだが、
それまでの自分が「未完成」なのだとしたら、足りない部分は「妻」だったとさえ考えていた。
まるでMISIAの『アイノカタチ』の歌詞みたい。

妻と電話をしている時にこんなことがあった。

 僕「何かね。凄い恥ずかしいことを言うけど、自分の足りなかった部分に出会った感じというか、もう1つ例えるなら、ずっと昔も一緒にいて、また出会うことができたみたいな、それぐらい特別な出会いだと思ってる」

すると妻はこう言った

妻「私はその時も幸せだったよ」

なんと恥ずかしい会話だろうか。
思わず言葉に出した自分が恥ずかしさで笑ってしまう台詞だったが、その時の妻は笑うこともなく、ただまっすぐにその言葉を口にしていた。
その時の僕はその言葉を聞き自然と涙を流していた。

長々とノロケ話を続けてしまったが、この話が後僕らの人生に繋がっていたなんて、今この物語を書きながらにして僕自身が気付き驚いている。

これがただのノロケ話じゃなかったということを全てを読み終えたあなたにもわかってもらえると僕は信じている。


『奥様は魔法使い』第1話 完

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