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『嘘月』EPISODE.2

「絶対戦士」
「生まれ変わり」に関する事例は世界中に存在している。学者による研究もされており、一説に「生まれ変わり」と呼ばれる現象には典型的な5つの要素があるという。

その要素の1つに「子供が"前世"の人物の死亡時の様子や家族関係,住んでいた場所などを感情的に語る」というものがある。
今回はそんな「生まれ変わり」に関するお話。

舞台は日本、2人の子供を持つ男性が体験したものである。
その日仕事が休みだった男性は5歳の長男と一緒に家で留守番をしていた。
妻と2歳になる長女は買い物へと出掛けていたのだった。

長男はお気に入りのブロックのオモチャ遊びに夢中だった。映画鑑賞が趣味だった男性は子供が産まれてから映画館へ行く事はめっきりなくなり、観たかった映画はレンタルして家で観るのが楽しみとなっていた。

その時も休日に合わせて観ようと新作映画をレンタルしていた。イラクを舞台にした爆発物処理班のアメリカ兵士の物語だった。
内容は少し息子にとって過激かと思ったが、ブロック遊びに夢中だったので気にせずに観る事にした。
物語が進むにつれて息子の事も気にならなくなっていた時、ブロックで遊んでいたはずの長男が突然話かけてきた。

息子「この人はテロリストの爆弾を処理するのが任務なの?」

息子が発した言葉に反応が鈍かった
男性「ん?あ、あぁー、そうだね」

息子はまだ幼稚園児だがテロリストなんて言葉知っていてもおかしくはないか、、、そんな事を考えながら聞き返した

男性「よく知ってるね、このテレビの兵隊さんを見てそんな事わかるの?」

息子「しってるよ、ボクのお友達も同じ任務してたもん」

息子が発した言葉の意味はわかるが、内容が理解ができなかった「ボクのお友達」とは?

男性「そんなお友達がいるの?それとも何かのアニメのお話のこと?」

息子のさきほどより元気なく応える
息子「アニメじゃないよ、お友達は任務中に爆弾が爆発して死んじゃった。ボクはその時違う任務で会えなかったんだ...」

TV画面内の物語は進むが頭に入ってくるはずもなかった、そんな時に妻と娘が帰ってきた

娘「ただいまー!」

息子「ママ達帰って来たよ、おかえりー!」
息子が勢いよく玄関へ走っていった。

男性は映画を観るのを中断した。
息子の言葉が頭から離れないでいた。
その日の夜、息子と一緒にお風呂に入るタイミングで「さっきのお友達の話だけど...」と聞いてみたが「何だっけ?」と話の続きを話してくれる事はなかった。

もしかしたら妻なら何か知っているかもしれないと子供達が寝た後に今日の出来事を話してみた。

妻「小さい子の前で戦争映画とかやめてよねー、相変わらずあなた本当にそういう話好きね」
と軽く流されてしまった。

どうしてもその事が気がかりで、男性はその後も息子から詳しく聞き出そうと試みた。
妻が言ったように男性は「生まれ変わり」などの非科学的な話に大変興味があり、今回のような子供が突然過去の記憶を話したという話はネットやTVなどでも知っていた事が大きかった。

男性は約半年にわたり少しづつ息子に質問を続けた。
そのほとんどが相手にされる事はなかったが、息子は本や映画など戦争に関する写真、絵、動画があると質問に応えてくる事があった。
息子は5歳、話は曖昧なものではあったが男性は根気強く質問を続けていくつかの事がわかった。

-映画を観ている最中に話をしたのは「イラク戦争」の記憶。アメリカ兵の記憶だと思われる。

-前世の記憶は1つではなかった。アメリカ兵よりも以前、複数の記憶を持っていた。

-複数の記憶が確認できたポイントは「戦争」だった。「どの戦争を体験したか?」でいつの時代にいたかを確認した。

-息子はどの「生まれ変わり」でも戦争に参加しているようだった。少なくとも10回以上の戦争に参加している。

-いずれも若くして戦争に参加し、戦死している。そして、驚くべき速さで生まれ変わっている。

男性は好奇心から調べ出したものの遡るほどに曖昧になる記憶、そしてなによりも自分の息子が何度も「生まれ変わり」と「戦死」を繰り返してきた事に悲しみを感じ、過去を記憶を探る事をやめてしまった。

男性は調べるうちに重要なのは「過去」の事ではなく、息子が生きる「今」、そして息子と生きる「今」なのだと改めて感じる事ができたとも言う。

しかし、この出来事を境に男性には払拭できない不安が生まれてしまった。

生まれ変わる度に戦うことが息子の運命であるのなら今世でもその戦いが起きるということ。

そして、男性のこの体験は「2010年」の出来事、2024年の現在、当時5歳だった息子は19歳になる。
今の息子に「前世の記憶」はすでに無いという。


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