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『嘘月』Ep.1 -I'm home-

EPISODE.1:I'm home

「宇宙」そこは無限にも見える孤独な空間。
これはそんな宇宙を舞台に1980年代半ば、
ある宇宙飛行士の体験したお話。

1980年代になると各国で初となる有人宇宙飛行を成功させる宇宙飛行士が誕生してた。
彼もその中の1人だった。

彼はその時2人1組で行っていた船外での修理作業を行っていたという。修理作業を終えるとパートナーが先に船内へと戻った、彼も続いて船内に入ろうとした、その時、彼は背後に気配を感じて後ろを振り向いた。

手を伸ばしても届かない距離、恐らく2mほど先だろうか、分厚い宇宙服と漆黒の宇宙空間が彼の距離感が鈍っていた。
そこには宇宙服姿の「誰か」がいたのだ。

彼はとっさに考えた。
「自分達以外に誰かが船外にいたのか?それはない!確かに船外にいたのはパートナーと2人だった。」っと状況を瞬間的に整理しようとしたがその「誰か」はそんな僅かな時間も与えてはくれなかった。
軽く挨拶をするように小さく右手を上げると彼の元へゆっくりと近づいてきたのだ。

頭の中を巡る疑問よりも恐怖が上回った時、彼は船内へと必死に戻った。そんな姿の彼を見て先に船内へと戻っていたパートナーが驚いていた。その時に彼は「誰か」を見たのは自分だけなんだと気付いた。その他の船内のクルーも変わった様子がなかった事で彼は精神的な問題を疑われるのを恐れて他のクルーにその出来事を言い出せなかった。彼は宇宙での任務を終え地球に戻るとすぐに宇宙飛行士を引退し表舞台に出ることはなかった。しかし40年以上もの時を経て彼はインタビューに応じてこう語った。

「宇宙飛行士が酸欠などで幻覚を見るという話もありますが、決して見間違いではありません。

なぜならあれと遭遇したのは一度ではないのです。船外活動で私が1人になる時に決まって現れました。
『あれ』は襲ってきたりなどはしませんでしたが、現れるとゆっくりと近づいてきたのです。
私も何度か接触をしようとも思ったのですが、どうしても恐怖心が上回ってしまいました。

なぜ『あれ』と呼ぶのかって?
『あれ』がなんだったのか、宇宙服の中身がなんだったのか見当がつかなかったのです。
当時は人間なのかも怪しいと思っていました。

1人になった時に現れたのには意味があったんですよ、なのにあの時勇気を出していればと後悔ばかりしていますよ。
宇宙飛行士を引退してしまった私に今できる事は宇宙へ旅立った宇宙飛行士達が無事に帰ってくる事を毎日祈ることだけです。
どんなに時が経っても皆の帰りを待ち続けます。」

彼にインタビューをした人間はこう語る「彼は全てを語っていないだろう。恐らく宇宙で出会った宇宙飛行士の正体にもう気付いているだろう。」

これまでに有人宇宙飛行をした人は約600人とされています。
私たちは有人宇宙飛行をした宇宙飛行士達のその後を知る機会は決して多くありません。
本当の宇宙に行き無事に帰って来た人はどれほどいるのでしょうか?

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