アルバトロスの免許がない!
あれから数日後。セジ丸は土屋整形外科の紹介状を手に、藤子保健衛生大学病院の待合室で座っていた。
アナウンス「発券番号193の猿谷さん。7番の診察室へお入りください。」
セジ丸は7番の入り口を探す。しかし見当たらない。1番の扉から2、3と順にあるのだが、6番のところで行き止まりになっている。
セジ丸「おっかしいなぁ。聞き間違えたか?」
セジ丸はアナウンス室に聞きに行こうとしたその時、謎の声が聞こえた。
謎の声「やあ、セジ丸くん。君がここに来ることは分かっていたよ。とりあえず扉を開けよう。入りたまえ。」
先ほど行き止まりだった壁に穴が開き、暗闇へ続く階段が現れた。周りの患者達も驚いている。
謎の声「さあ、早く来るんだ。」
セジ丸が怖気ついていると、近くにいた患者の一人がその階段に向かって駆け出した。
患者「やっと見つけたぞ!この奥にアレが眠ってるんだな!誰にも渡さないぞ!」
しかしその直後。天空から小さな針が降ってきて、天井やら壁やらを上手いことかいくぐり、その男の脳天をぶち抜いた。
男「あべし!」ドサッ…。
謎の声「セジ丸くん。君は選ばれし者なのだ。ここに入るのにふさわしい男だ。心配はいらない。さぁ、入るのだ。」
セジ丸は覚悟を決めて階段は踏み出す。天空からは何も降ってこない。セジ丸が階段を降り始めると入り口が閉じられた。もう後戻りはできないようだ。
セジ丸「おーい!真っ暗で足元が何も見えないぞ!明るくしてくれぃ!」
すると一気に光が差し込んだ。
なんと階段の下には巨大なゴルフコースがあるではないか。
見渡す限りの緑の芝。所々に立っている赤い旗の数は500はくだらないと思われる。
セジ丸「すっ…すげえ❗️なんだこのバカ広いゴルフ場は!遠すぎてグリーンが見えないぐらいだ。」
謎の声「階段の先に車が止まっている。それを自分で運転して、私のところまで来て欲しい。行き先は看板を立ててあるから、その指示通りに進めばいい。君の到着を待っているぞ。」
階段を降りたセジ丸は言われた通り車に乗り込んだ。がしかし!なんとマニュアル車であった。
セジ丸「やべえ。俺オートマ限定なんだよなぁ…。どうすればいいんだ?」
セジ丸は車内でアタマを抱えている。
頭を抱えてから何時間経ったのだろう。あたりは地下なのにも関わらず、すっかり暗くなっている。謎の声の男はどこへ行ってしまったんだ。なぜ探しに来ない。到着がこれだけ遅くなれば普通は探しに来るだろう。何かトラブルでもあったのではと心配もするだろう。なのにあいつは来ない。セジ丸はあいつの冷徹さに対して怒りが込み上げてきた。
セジ丸「なんで誰も助けてくれないんだーー❗️」
セジ丸は力任せにハンドルを叩いた。すると、ハンドルがガコンっと外れた。ハンドルがついていた部分を見ると一冊の本が目に入った。
セジ丸「これは?」
その本の表紙を見ると、『誰でも合格!マニュアル車運転マニュアル』と書いてあった。
セジ丸「これだ!これを読んで勉強すればこの車を運転できるはず。よし!頑張るぜ!」
こうしてセジ丸の孤独な戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
つづく
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