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アルバトロスの左手

ワイはセジや!プロゴルファーセジや!!

つむじ風舞うティーグランドで ねらうはグリーンのターゲット‼️


セジ丸「今日もゴルフの練習だ。クラブとボールと熱中症対策の塩と…」

ミスターX「ふはははは…。残念だったなセジ。今日の練習は中止だ!」

セジ丸「なに!?どうして中止なんだ?ミスターXよ。」

ミスターX「今日の予想最高気温を見てみろ。38.5度だぞ。こんな日はゴルフなんてもってのほかだ!早く家に帰ってママのオッパイでもしゃぶってるんだな!ハッハッハッハ。」

と言い残しミスターXはゴルフ場を後にした。

残されたセジ丸だが、「確かにミスターXの言う通りだ。今日はやめておこう。」と素直に帰り支度をした。

セジ丸は帰宅すると、軽くシャワーを浴び、冷たい麦茶を飲み干した後リビングのソファーに腰かけた。

部屋の中はエアコンが効いており快適そのものである。それなのにセジ丸はなぜか落ち着かずにいた。そこにセジ丸の弟の大丸がリビングに入ってきた。

大丸「あれ?セジ兄、もう帰ってきたの?練習は?」

セジ丸「いやぁ、今日はちょっと気温が高そうだからやめといたんだ。」

大丸「へー、そうなんだ。ゴルファーっていいな。そんな理由で勝手に休めるんだから。俺たちサラリーマンは暑くても寒くても仕事しなきゃならないからな。」

セジ丸「なんか文句でもありそうな言い方だな?なんだったらやってやってもいいぞ!」

2人の間に険悪なムードが流れる。

そこにまた、リビングに誰か入ってきた。

小丸「ただいまー。外どら暑いねー。」

末っ子の小丸である。小丸はまだ4歳なのに、セジ丸と一緒にコースを回り、10回に4回(良い子のみんなは約分しよう)ぐらい勝ってしまうという、天才ゴルフ幼児としてメディアにも紹介されたこともある。

小丸「あれ?兄ちゃんたちどうちたの?ケンカでもしてりゅの?」

セジ丸・大丸「いや、べ、別に…なぁ!」

2人は調子を合わせ、その場はやり過ごした。

セジ丸は35歳、大丸は34歳。この2人の父親と小丸の父親は異なる。セジ丸と大丸の父親は指定暴力団海口組の若頭猿谷正和(さるたにまさかず)なのだが、セジ丸が14 歳の時に抗争の流れ弾により帰らぬ人となった。その後は女で1つでセジ丸と大丸を育てた母であったが、4年前にいきなり小丸を出産。小丸の父親はセジ丸の元コーチではないかという憶測も飛び交ったが、母親は一切の情報をシャットダウンして現在に至る。

小丸「セジ兄ちゃん。昨日の練習でいつも以上にボールがスライスちてたのはどうちて?」

おやつのマシマロを頬ばりながら小丸が問う。

セジ丸「あぁ、後から気づいたんだけど、一昨日左手をタンスにぶつけて悶絶してたの見てたよな。どら痛かったけど放っておいて翌日練習したんだけどさぁ、ずっと痛くて。今もまだ痛いよ。それで、握力の影響でスライスしたんじゃないかなぁ。」

小丸「それはいけないね。もちかちたら骨折してるかもちれないし、今から病院で診てもらおうよ。」

セジ丸「うーん。そうだな。練習もなくなったことだし、そうするか。」

セジ丸はタンスから保険証を取り出して近所の整形外科へ向かった。

土屋整形外科に着いたのは午前10時を過ぎたところだった。

待合室には誰もおらず、セジ丸はすぐに診察室に呼ばれた。

セジ丸が左手の症状を伝えると、軽く触診した後すぐにレントゲンを撮ることになった。

撮影後、再び診察室に戻り先ほど撮られた写真を見ながら医者が話し始めた。

医者「猿谷さん。ここ見てください。」

セジ丸「ここって?左手の薬指に影があるってことですか?」

医者「そうです。骨折ならもっと違った映り方になるんですが、この温泉マークの湯気みたいなモヤモヤは…。念のため一度大きい病院で見てもらいましょう。紹介状出しておきますから。」

医者は勝手に話を進める。

セジ丸「え?そんなに心配なんですか?うーん…行きますけど…。」

医者「念のために、ということですよ。そんなに心配せずに。ねっ。」


セジ丸は帰り道、コンビニで現金を下ろしたのち家に帰った。


つづく






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