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資格はあくまで道具という話

前回は、私が獣医師免許を取るまでの経験を書かせていただきました。まだ見てないという方は、下のリンクからご覧ください。


今回、私が伝えたいことは「資格はあくまで道具」だということです。
なぜそのような考えに至ったかについて、私の経験をもとにお話しさせてください。

獣医師免許を取得し、晴れて獣医師となった私は千葉県の動物病院に就職しました。最初の頃の仕事内容は、掃除、動物の保定、片付け、麻酔の記録、入院動物の処置などがメインでした。基本立ち仕事なので腰がとても痛く、お昼休みが15分の時もありました。やっと座れた時には、椅子を作ってくれた人に感謝の気持ちが沸きました笑。

体力的には辛くても、最初は言われたことだけをやっていればいいので、心理的には余裕がありました。しかし入社して3ヶ月もしてくると、自分で考えて行動することも求められるようになってきました。そこから本格的に仕事が辛いと思うようになっていきました。私の場合は「失敗したくない」という思いが強く、仕事を任されるというのは、プレッシャーでしかありませんでした。さらに業界の性質上、「失敗=命に関わること」なので、プレッシャーはさらに大きかったです。

ですので、いつも自分の行動が行動する前に上司に確認を取って、「正しい」と確信を持った上でしか行動できませんでした。(正直な話、確認をとっていれば、「半分は指導した上司の責任にもなる」という考えもありました。)しかし、責任を半分にするということは、責任を取ることによって得られる、やりがいも半分にするということでもありました。

外来に出られるようになって、しばらくしても、裏で上司に確認を取りながら進めていました。そのため、飼い主さんに感謝の言葉をもらっても、心から喜べていない自分がいました。とにかく、失敗することが怖かったのです。次第に私は、転職を考えるようになっていました。

本格的に転職活動を始めたのは、入社した年の11月頃でした。活動を始めた時から、動物病院以外の就職先を希望していました。なぜなら病院を変えるだけでは、今抱えている問題(命を預かるプレッシャー)は解決できないと考えたからです。

初めは、獣医師専門の転職エージェントに登録して、企業を勧めていただきました。主に獣医師免許や経験を活かした仕事で、ペットフード営業や獣医系出版社などがありました。しかし最初紹介された求人中には、私がやりたいと思った仕事は殆どありませんでした。12月に1社、獣医療系の出版社を受けましたが、1次面接で不採用となりました。

年が明けて1月、色々考えた結果、私は獣医療業界よりも他業界に魅力を感じるようになっていきました。なぜなら、獣医療業界で働くとなると、たとえ動物病院勤務でなかったとしても、獣医師と関わることが多くなると考えたからです。当時の私は、「臨床獣医師を辞めること=挫折」と考えていたので、獣医師と仕事で関わることになったら、その度に挫折した時の自分を思い出すことになると思いました。そこで、1月から人の医療業界専門の転職エージェントに登録し、そこで紹介された企業を中心に転職活動を進めることにしました。

紹介された求人の中でも、医薬品専門の広告代理店業界に興味を持ちました。医薬品であれば、多少獣医師の知識の活かせますし、デスクワークの仕事であれば、臨床現場ほど時間に追われることなく、じっくりと考えながら仕事ができると考えました。また、業界を変えるからには、新しいことをしたいと考えていたので、広告業界を選びました。それ以降は、医療系広告代理店を中心に選考を受けました。その結果、4社目で無事、現在勤めている会社から内定をいただくことが出来ました。

これまで携わってきた業界を離れるのは、名残惜しさもありましたが、新しい体験をできるワクワクもありました。そして、2022年8月に退職し、2022年9月から現在まで約1年半、医療系広告代理店で勤務しています。正直なところ、転職して「めっちゃよかったか?」と言われると、自信を持って「はい!」とは言えません。特別仕事が楽しいわけでは無いですし、前職のように、直接「ありがとう」と言われることは無くなりました。

ですが今、私は前を向けています。やりたいことで100%生きようとしています。前職の時はそんな考えすらありませんでした。昼ごろ起きて、どこにも出かけず、家でYouTubeみて半日を過ごす。後悔しながら眠りについて、起きたら仕事へ行く。本当に食って、寝て、働くという毎日でした。

しかし、今は休日にはジムに行くし、YouTubeも以前ほどは見なくなりましたし、食事にも気をつけるようになりました。何より気持ちが上向きになって、やりたいことで生きるためにコーチングも受けています。獣医師免許を活かした仕事はしてませんが、それでも身体的・心理的な健康面では、明らかに前職よりも良い状態です。

私は人間は生まれながらにして、幸せになる資格があると考えています。それは、国から与えられるどんな資格よりも、ずっとずっと大切です。「資格を使うことが目的になっているかも」と思った人は、「今の自分は幸せか?」、「心は喜んでいるか?」を考えてみてください。もし、「幸せと感じる瞬間が全くない」、「好きたっだことが楽しめていない」と感じた時は、自分と向き合って「本当にその資格は、自分を幸せにしてくれているか?」と考えてみてください。

結果的に資格を使わなくなっても大丈夫です。捨てるわけじゃ無いですから。ただ、今の自分には必要ないだけです。5年後、10年後、必要になったら使えば良いだけのことです。私自身もこれから先、獣医師免許や臨床経験がこれからの人生で、どのように役に立っていくのか、(まるで漫画の伏線回収のように)楽しみにしています。






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