タイムテーブルの作成
演奏会当日朝からのタイムスケジュール表を本番の1か月前までには作成しなければならない。舞台設営図と同様に、ホールとの事前打ち合わせに必要な資料である。タイムスケジュール表は場合によってはステージマネージャー等裏方用と、そこから必要事項を抜粋した演奏者用とに分けて作成したり、各役割ごとに個別に作成したりする。
タイムステーブルを構成する基本的な要素は「いつ、どこで、だれが、何をする」である。「いつ」と「何をする」が記載されていないということはないが、「どこで」や「だれが」が抜けていることが時々ある。タイムステーブルの形式は2パターンある。表を作成するのに縦軸が時刻となるのは共通であるが、横軸が場所を中心に組まれる場合と、人を中心に組まれる場合がある。実際に動く人にとっては人を中心に表組されていた方が理解しやすいが、全体を見渡す人にとっては場所を中心に表組されていた方がわかりやすい。一長一短があるのでどちらで作成してもかまわない。タイムテーブルを作成するうえでもう一点気を付けることは、一枚の表にまとめることである。何ページにもわたるような詳細さは不必要である。
ホールのスタッフは演奏者がステージリハーサル時から演奏しやすいようにと、私たちには見えないところで様々な動きをしてくれている。例えば、照明の調節をどの時間帯にすべきか、各場所のエアコンのスイッチを何時に入れるか、マイク等を使うのはいつか、などのことを見守りながら動いてくれている。陰で動くためにも事前にタイムテーブルが必要である。
当日のスケジュールは舞台照明やアナウンスのスケジュールについても細かく考えておかなければならない。舞台照明を上げるのは、演奏者が入る前か後か、客席の電気を消すタイミングはどのタイミングか、など想像以上に細かく事前に計画を立てておくべきである。また、録音業者、花屋、宅配弁当などの業者に依頼している場合は、その人たちが来館する時間についてもタイムタイムテーブルに書いておかなければならない。
本番時の進行は分単位で記入する。オーケストラの定期演奏会では、演奏時間も約〇分とタイムスケジュールに記載する。アンサンブル会など演目数が多いプログラムでは演奏時間は〇分〇秒と秒単位で計画しておく。1演目あたりの演奏時間の誤差が30秒あってそれが積み重なると、10演目で5分近くずれてしまうことになる。
午後2時開演の場合の大まかなスケジュールの例を示す(「だれが」「どこで」は省略)。
9:00 集合
9:05 舞台設営、受付設営
9:55 チューニング
10:00 ステリハ開始(アンコール→メイン→中プロ→前プロ)
12:30 諸連絡、その後昼食休憩
13:25 舞台撤収
13:30 開場
14:00 開演
14:03 前プロ(演奏時間約6分)
14:15 中プロ(演奏時間約14分)
14:30 休憩(20分)
14:55 メイン(演奏時間約40分)
15:35 カーテンコール
15:45 アンコール(演奏時間約3分)
15:50 終演
16:05 舞台片付け
16:50 完全撤収
演奏会に慣れているアマチュアプレイヤーならこのタイムテーブルがあれば十分であるが、スクールオーケストラの場合はもっと詳細に書いておいた方がいい。例示したスケジュールでは役割分担も場所も書かれていないので初めて演奏会に参加する人にとっては意味不明なタイムテーブルとなりかねない。
本番中の詳細なタイムスケジュール例を示す。こちらの表には、照明の明転暗転、影アナウンスなども記載している。また、この表を作成するために必要となる各所要時間も示した。この所要時間は、いくつかの私がこれまでに経験してきた本番の実例と、いくつかのオーケストラのYouTubeの動画から平均的な値を算出したものである。
ステージリハーサルの曲順はタイムテーブル作成前に指揮者と決めておかなければならない。ステージリハーサルは本番の逆順に行うことが時々ある。それは、セッティングのためであるし、アンコールの曲を利用して気楽に音出しをするためでもある。セッティングが曲によって変わる場合、練習の最後に本番最初の曲がくるようにしておけば、リセッティングしなくてもそのまま本番を迎えられるからである。逆に、本番中のリセッティングの動きをステリハで練習したい場合は本番と同じ曲順で練習する必要がある。
当日の動きによってスケジュール変更となる場合の団員への連絡方法も事前に決めておいた方がいい。メーリスやLINEを使用すれば瞬時に全員に連絡が届くはずなので、それらをうまく活用するといい。スケジュールが変わりやすいのは、ステリハ開始時刻と休憩時間である。朝の舞台設営が早く終わればステリハ開始時刻を早められ練習時間を増やすことができる。ステリハが延びてしまった場合は、裏方紹介や昼食時間がずれることになる。本番の前半プログラムが終わった時点で大幅に時間が押している場合、休憩時間を短くすることもある。休憩時間を短くする場合、演奏者だけでなく裏方全員に周知しなければならない。舞台袖のステージマネージャーなどの舞台袖に待機する裏方だけでなく表周りの受付担当者やドアマンにも連絡が必要であるし、ホールスタッフへの連絡も必要である。依頼した録音業者等にも連絡をするのが筋である。録音業者はプロであり様々なトラブルにも慣れているので、連絡できなくても予鈴と本ベルの音を聞いて何ごともなかったかのように対応してくれるはずである。お客さんに配布したチラシやプログラムに休憩時間を記載してしまった場合は、休憩時間を短く変更することはできない。
本番の進行がタイムテーブルとずれる最大の原因はセッティングの変換時間と挨拶などのMCの長さである。曲の演奏時間は事前に計っておけば、そんなにずれることはない。もし自分たちの演奏時間を測らずに、CDなどの時間を元に見積もっているようだったら、それは間違った時間見積りかたであり、タイムテーブルから実際の進行がずれて当然である。リセッティングに要する時間を前もって測定することは稀である。決してリセッティングの練習をしなくていいというわけではない。しかしながら、もし音楽室でリセッティングの練習をして時間を測ったとしても、ホールとは段差や距離や物品の重量が違うので全く同じ時間でリセッティングするのは難しい。挨拶などのMCは、原稿を読み上げるだけなら予定通りの時間で終了するが、暗記して話したり、アドリブで話したり、緊張したりすると予定時間から大幅に伸びてしまいやすい。余裕をもった時間配分が必要である。
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