フクロウの夢の話
夢の中で息子とバスに乗っていると、大きな籠を持った見知らぬ男性が乗り込んできた。
どうやら中には弱ったフクロウが入っているらしく、チラリと覗き込むと確かに元気のなさそうなフクロウがいる。
「弱ってるからもう捨てるんですよ」
という男性の言葉にバスの乗客がみんな困惑した空気になったのだが、
「あの」
と息子が一歩前に出て言った。
「捨てるなら、僕が引き取ってもいいですよね?」
男性は「え、ああ…」と曖昧な笑みを浮かべながらあっさり籠を息子に寄越し、バスを降りていってしまった。
私は息子の意外な行動にちょっと驚きつつ「そう言って救出すればよかったのか」と感心した。
フクロウのお世話なんてしたことないけど、とにかく連れて帰って元気になってもらおう。そう思ったところで目が覚めた。
弱っているフクロウを助ける夢は、身近な人や家族の心身が弱っているから、献身的に助けてあげることで危機を脱せる、という意味だ。
ちょうどこの頃、夫が謎の体調不良で全然食べられない日が続いていた。
しかも夫はよく「フクロウに似てる」と言われることから、あの籠の中の弱ったフクロウは夫を表していると見て間違いないだろう。
これはしっかり助けてあげなくてはならない。夫が食べやすい発酵食品をいろいろ作り、なるべくゆっくり休んでもらった。
この夢をドルイド式の読み解きをすると、また違った解釈が見えてくる。
夢を20種類の「聖なる木」に分類すると、私が見た夢は「ナナカマド」に該当する、吉兆となる可能性の高い夢である。
ナナカマドの聖なる言葉は「善きものは在れ、悪しきものは去れ」だ。
少し前に私も体調を崩していたのだが、ようやく回復して元気になった頃だったこともあり、私の気分が良くなっている兆候でもあった。
バスは周囲の人間関係を表す。体調を崩して危機に直面していた夫を息子が救ったとも言えるが、これは紐解くとこういうことになる。
普段、バスと電車を乗り継いでかなり遠方の中学に通う息子は、ここ最近よく夫に車で学校まで送ってもらうことが増えていた。
学校はバスと電車で行くと遠方なのだが、うちから車だとそこまで遠くない上に夫が仕事でまわるエリアにも近いため、そんなルーティーンになっていたのである。
夫の体調不良の原因は、その疲れの蓄積もあったのかもしれない。
息子がフクロウの救出を申し出るように、自力で行こうとすることで、夫の負担は減り快方に向かうだろう。
それと同時にフクロウは知恵や賢者の象徴であることから、フクロウが弱っているのは「私が学んだ知識をまだきちんと自分のものにできていないこと」を表していたりもする。まぁそこは精進していくしかない。笑
と、ここまでの夢解釈を夫に伝えると
「え?フクロウの夢ってテキサス・スマイルの話じゃないの?」
と言われた。本当に人ってどこを見てるかで全然世界が違うものだ。
テキサス・スマイルとは何なのかと言うと、正式には「テキサスのお調子者」という夫のニヒルな笑顔のことである。
私があまりにも生理痛がしんどくて大変だった時に編み出された笑顔だ。
夫は体調を崩してあまり食べられなくなってから、顔に力が入らなくてこのテキサス・スマイルができなくなってしまったのだ。
テキサス・スマイルができない、と気づいた時の夫は少なからずショックを受けた顔をしていた。
そんな話をしている私たちのところへ息子が来て「何の話?」と聞いてきたので
「父ちゃん具合が悪くてテキサス・スマイルできないんだって」
と言うと、こうだっけ?と息子は簡単にテキサス・スマイルを披露した。
そもそも夫の「アメリカ風がやれてない感」が面白かったのに、息子はちゃんと片目だけニヒルにできていたり顎を強調していてかなりテキサス指数が高い。
「俺はできなくなったけど、お前が継承してくれたのか…」
と夫は感動とともにやはり少なからずショックを受けていた。
そういうわけで、夫からするとフクロウの夢は、テキサス・スマイルを引退した自分に変わり、息子が名乗り出てその座を引き取ったという解釈らしい。
夢に限らず、すべての物事は多次元的な側面を持っている。
だからどこでどう解釈するか、またその解釈を採用するか否かは個人の自由なのである。
ちなみにその日息子は学校で、友達から何の脈絡もなく
「お前は人間とフクロウのハーフだ!」
と謎の言葉を言われたらしい。やはり人生は多次元である。
あれから夫は私の献身的なケアの甲斐あり(押し付けがましい)無事に元気になり普通の食事を食べられるようになった上に、再びテキサス・スマイルができるまでに回復した。
そんなタイミングでマクドナルドから「テキサスバーガー」なるものが発売中らしいので、そのうち家族で食べに行こうかと思っている。
そんなことを考えながらインスタを見ていると、まさかのテキサスの雲の写真が視界に飛び込んできた。
嵐の時の雲らしいのだが、ちょっと信じられない雰囲気である。
やっぱりテキサスには何かあるな…
と、私もテキサス・スマイルでいいねを押した。