無限のあの子 無限のわたし
勝手口の扉にしばらく貼っていた、月と地球のポスターを剥がした。
息子が4年生の時に学校からもらって帰ってきたカレンダーの写真だ。
宇宙の写真が大きく載っているカレンダーは教室で使われていたもので、その月が終わるたびに息子が先生からもらっていた、コレクションの中の一枚だ。
現在、息子は中学2年生。当然ながら、もう学校からカレンダーをもらって帰ってきたりはしない。宇宙の写真にも、以前ほど興味はない。
何年も貼ったままだった月と地球は、さすがにもう古くなっていたので剥がすことにしたけど、ふと、毎月カレンダーをもらって帰ってきていた「あの子」が本当に可愛かったな、と思った。
「今の息子よりあの頃の息子が可愛かった」とか、そういうことを言いたい訳ではない。
タロットセッションで魂の地図を見ていると、時々「○歳のあなた」がキーワードになることがある。3歳かもしれないし10歳かもしれないし、24歳かもしれない。その年齢の頃のクライアント様の声を聞いてあげる必要があったり、存在を思い出してあげることが解決のヒントになることも多い。
それは、過去、確実に実在した人格だ。
今は忘れ去られていたとしても。
それらの人格を「インナーチャイルド」と呼ぶこともあるが、本質的には「未消化の感情」と捉えていただくとわかりやすいかもしれない。
だからインナーチャイルドは「子供」とは限らず、当然大人になってから生まれたインナーチャイルドもいる。
私は「○歳のあなた」と表現することが多いけど、年齢だけに限らず、一瞬一瞬ごとにインナーチャイルドや人格は存在するのかもしれないと最近思う。
無限のあなたや、無限の私が、それぞれ自分の内なる宇宙に存在しているのだ。
そういう無限のあらゆる息子を振り返ると、やっぱりどの子も「今この瞬間の息子」と同じとは思えないのである。
そういえば、コロナ禍で姉家族にはもう2年も会っていない。こんなのは最長記録だ。
お互いの子供の成長過程の2年間を見ることができないのは本当に残念だし、ましてや小6から中2なんて思春期突入で大きく変わるタイミング。息子は背も15cmほど伸びて、ファッションに目覚め、柔らかいほっぺはシュッとして、マニアックにやっている筋トレの成果でムキムキの体型にまで変貌を遂げている。
姉の中で、今の息子が姉の知ってる「甥っ子」と一致しないと言うのも仕方ない話だ。きっと姉の子供たちも私の知らない姿になっているに違いない。
赤ちゃん、幼少期、小学1年生、2年生…
カレンダーをもらって帰ってきていた、4年生。
4年生なんて「ザ・小学生男子」のピークだったはずだ。本当にやかましくて、弾けるエネルギーそのものだった。
だけどカレンダーを大切そうに持って帰ってきていた瞬間の「あの子」は、普段のやんちゃな顔とは違う、とても繊細な目をしていた。
今も彼の奥底に眠っているであろうその子は、本当に宇宙に何かを感じていたのかもしれない。
ただカレンダーを剥がすだけで、そんなことを思った。
外でひぐらしが鳴いている。