【テレビコラム】朝ドラ「エール」(6月3週)をいっき見した

朝ドラでは、父親が失踪することや夭逝する設定がよく用いられる。

「とと姉ちゃん」でも、亡くなった父親(西島 秀俊)が幻として出てきた際は、感動的な演出であると話題になった。

今週の朝ドラ「エール」は特別編。最近、朝ドラの本放送終了後にスピンオフが放送されることがあるが、あのノリである。スピンオフを本放送内でやってしまった感じ。そのこと自体が悪いとは思わない。また、おそらくコロナ禍が影響しているものとも思われる。

喫茶店バンブー店主「古本屋の恋」(第58回)は、なかなか面白かった。様々な装いで古本屋を訪れる仲 里依紗がとにかく麗しい。絵から抜け出たとはまさにこのこと。

「環のパリの物語」(第59・60回)もなかなかの秀作だった。芸術を究めることの難しさや、昨今話題の人種差別の問題にも触れつつ、体格差などによる違いという事実についてもちゃんと押さえられていた。

さて、問題は「父、帰る」(第56・57回)である。最もコメディタッチで描かれ、笑いながら見ることができた。朝ドラで描かれる父親像は、お人好しかダメ親父である。従来、朝ドラで父親がふたたび登場する場面は、感動や慟哭などを伴うハイライトとして描かれてきた。

感動系
・『とと姉ちゃん』小橋 竹蔵(西島 秀俊)
・『わろてんか』北村 藤吉(松坂 桃李)→この場合は夫
慟哭系(失踪系)
・『ふたりっ子』野田 光一(段田 安則)
・『まんてん』日高 源吉(赤井 英和)
・『まれ』津村 徹(大泉 洋)
・『ひよっこ』谷田部 実(沢村 一樹)

その意味では、朝ドラ史上もっとも笑える父親の再登場であった。亡くなった父親が、お彼岸かお盆に、こちらの世界に帰ることが出来るチケットが当たったため「父、帰る」という設定である。父は閻魔様と話をして、三角頭巾まで付けた死装束姿で家族の前に現れる。

あれ?関内家って熱心なクリスチャンという設定ではなかったでしたっけ!?大河ドラマの時代考証のように、「エール」ではキリスト教考証の人まで用意いたみたいですよ。そこまでは、気づいてなかったですけど。

キリスト教考証を担当された方にも敬虔なキリスト者の方々にも失礼であるし、笑いのためだけに利用された仏教にも失礼だと思う。NHKさん、脚本家さん、ちょっと設定が安直だったんじゃないですか?

最近はNHKのドラマを見ていても、仏壇には遺影を置かないようにするなどの配慮も見られ、ストーリーとしては笑えただけに、少し残念な思いがする。

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