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◆ 話のネタ ◆ No.18 『他人の銭は、重い! 2億6千万円』

 銀行員時代、最初の仕事は、お金を数えたり運んだり、ATM、CD、両替機のお金の管理でした。 支店でも現金を触れる人は、限定してあり、窓口、ATM等へのお金の受け渡しをする場所は、資金方と呼ばれ、カウンター内で胸までの高さのフェンスで囲まれ、床に赤いテープが貼ってありその中に入れるのは、資金元方と現金を数えたり、運んだりする私の2人だけでした。
 
 勤務初日から、1万円札を縦勘定、横勘定と2度数えて、100万円ずつ封紙で縛り、銀行名、日付、自分の小印を押印し、100枚あるかを機械で読み取り、100万円を10束そろえて、本封紙で十字に1千万円の束をつくり、銀行名の角印と日付を押印するという作業が、日々ありました。 
 
 初めて1,000万円を目にすると1,000万円が気になって気になって仕事が手につかない感じでした。 しかし、1ヵ月もすると、1,000万円を見てもお金という感覚は、なくなり、只、失くしてはならないものとの認識だけに変わってきました。
 
 入行当時、1万円札は、聖徳太子で、1,000万円は、1,350gでした。 よって、3億円事件の犯人は、1,350g×30=40.5kgあり、ジュラルミンケースに1億円ずつ入れて、3ケースかつジュラルミンケースの重さが1つ5kgとすると全部で、55.5kgになります。  

ちなみに、私が一番沢山持った現金は、2億6千万円でした。ジュラルミンケースにMax 1億3千万円はいり、それを左右の手でひとつずつ持ちました。これで、45kgで重くて、よろよろと歩く状態ですが、50m 8秒で持って走ったら全部やると言われたら走れたりして・・・・なわけはないか(笑)  
 
とにかく、他人の銭は、ただただ、ひたすら重い!  福沢諭吉になってからは、1,000万円は、1,030gと24%軽くなりました。
 
 そんなある時、お客さまから電話があり「3日後の13時に出金に行くから現金準備しといて!」 「おいくらのご出金ですか?」 「3億円」 「えっ、3億円ですか、大金ですので、持ち歩きは、非常に危険ですのでお振込か、銀行保証小切手にされては、如何でしょうか?」 

「えっ! お宅の銀行 現金準備できないの?」 「いいえ、前もってお電話頂いておれば、10億でも20億でもご準備可能です」 「そぅ、それじゃ、3億用意しておいて!」 「分かりました・・・・」
 
 まったく知らないお客様でしたが、約束通り3日後の13時に中年男性1人が、来店されました。 応接室にお通し、ジュラルミンケース3つに1億円ずつ、詰めておりお客様の目の前でジュラルミンケースの蓋を順番に3つ開け、「3億円でございます、どうぞ、ご確認願います!」 


・・・・・あっ、入らん!・・・・」 なんとそのお客様は、デパートで販売しているような普通の紙袋2つを持参されていただけでした。
ぜいぜい、3千万円×2袋=6千万円しか入りませんし、破れます。

袋でございましたら、弊行の大変丈夫なポリエステルでできた袋を御幾つでもご用意いたしますので、どうぞ、そちらでお持ち帰り下さい!」 
いや・・・あの・・・・その・・・・」 
「・・・・すいませんが、振込にして下さい」 
「・・・分かりました・・・・」
 
 結局振込となりその後、お客様用に準備した3億円は、日銀に送り返すために、全部封紙を外して、機械で数えなおし、100万円ずつ封紙でまとめ1,000万円ずつを本封する必要があり、その作業に2時間かかりました。 

何故、現金で持って帰ろうとしたのか分かりませんが、3億円の現金をただ見て見たかったのかな?と思いました。
 
 銀行員時代、私が勤務していた支店で、お客様に現金をお届けした最高額は、バブル期でしたが、10億円でした。 重さが135kgです! 何人もが付き添って現金を運んで行きました。 先輩に「何で、現金10億円必要なんでしょうか?」 「バブルだから不動産屋が、地主に土地を売って欲しいと交渉するが、渋られる為、目の前に現金10億円を積んで、相手を圧倒して土地を買うんかもしれんな?」 
 
 事実、私のお客様で、バブル期に、毎日不動産屋がやって来て、土地を売ってくれとあまりにしつこかったので、あきらめさそうとして、相場の3倍を提示しそれなら売ると言った瞬間に「買います!」と即答され全く売る気のない土地を売ってしまったお客様がありました。 とにかく、バブル期は、滅茶苦茶で50坪 10億円の土地が30分で売れるくらいでした。 当時勤務していた支店の前の土地は、坪4,000万円でした
 
 ある地方都市の駅前の土地を、大手物流会社が購入したかったが、個人地主に大手上場企業が交渉に行くと価格がいくらでも吊り上げられる可能性があるので、地元の30代のお兄ちゃんが1人でやっている不動産屋さんに購入に行かせ、即日、その不動産屋から10億円で買い取るということがありました。

中に入った30代の不動産屋は、「私は、土地を高く買って、安く売る良心的な不動産屋で~す~」 と言っていましたが、上記取引で売主から3%、買主から3%の手数料がはいり、10億円×3%×2倍=60百万円の利益です。 当然、いきなり10百万円以上するベンツを購入していたし、1発でこの利益を得た為に翌日からは、ちまちまとした仕事は、一切する気が起こらない状態になります。
 
 聞いた話ですが、バブル絶頂期、午前中にある銀行の応接室で10億円で土地を購入し、その融資は、ファイナンス会社から全額10億円を借りる、そしてその日の午後、同じ応接室で、その土地を10億6千万円で売却する。 ファイナンス会社から借りた10億円を即日返却するとペナルティ2%で、2千万円払わなければならないが、売却益が6千万円出ているので手元に4千万円の利益が残る。
 
 私のお客様が、大阪の北新地(東京でいうと銀座)で3本の指に入る超高級クラブPに10年来通っていたが、バブル期は、「不動産屋と株屋が幅を利かせ俺ら常連は、店の端の方で小さくなっていたんや」 「社長でもそうだったんですか!」  
 
「当時、見たんやが、不動産屋が、お店の女の子に、『今晩、これで俺と付き合え!』いうて、100万円を女の子の足元に投げたんや」 
「ひどい話ですね」 「そや、そしたら、女の子がそれ拾うたからな~
それが、バブルが弾けた今、不動産屋も株屋もまったく見ないが、どこ行ったんやろか?」 
 
「そりゃ、社長、ドラマでよくあるのは、土地と借金を持ってて、土地が大幅に下落し返済できず、ヤ〇ザにコンクリート詰めにされて大阪湾に沈められるとか・・・・」 
「かもしれんな・・・・」 
・・・・・・・
 
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