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映画の記録#03「ミステリと言う勿れ」

最新の映画の興行ランキングで首位に耀く「ミステリと言う勿れ」。原作・ドラマの人気から、この映画の「成功」は当然のことだったのかもしれない。


原作でも人気が高いと言われている「広島編」。本エピソードも、伏線を至る所に忍ばせ、鮮やかに回収するミステリとしての面白さや登場人物たちの関わりによって生まれるユーモアの楽しさが素晴らしい。そして、何より菅田将暉演じる主人公、久能整の細やかな視点と思考の面白さが際立っている。

柴咲コウ演じる赤峰ゆらが「女」という価値観を押し付けられる場面では、久能整はその「女」という価値観がいかにその対象である女性を無視し、男性の都合で作り上げられているか、ということを淡々と語る。

久能整の言葉に観客ははっとさせられる。それは、彼の思考が「アンラーン(unlearn)」を起点としているからではないか。
「アンラーン(unlearn)」とは、一度今抱いている思い込みや先入観、価値観を一掃し、物事を捉え直すことである。
久能整は「アンラーン(unlearn)」の精度が素晴らしい。誰もが知らず知らずのうちに「当たり前」としていることを、本当にそうか、と問い直す。

自分の価値観が崩される驚きと快感。「ミステリと言う勿れ」の紛れもない魅力であり、人気の秘密なのではないだろうか。

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