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『_C』 第三話 卒業

俺は飛鳥の言っていることが
さっぱり分からなかった。

というか、頭が追いつかなかった。

       だって…
     飛鳥は夢の中で
     死んでいただろ…。

○○「      嘘だ…。
        だって…
       あの悪夢では
       飛鳥の方こそ
       死んでいたはず…」


飛鳥『実は………違うの。』



○○「え?」

飛鳥『     実は…
      あの悪夢は…
     私の記憶なの…。』


○○「飛鳥の…記憶…?」

飛鳥『    あの夢は、
      私の実体験。
     つまり、あの夢は
     ○○の交通事故
      を表していて、
     私と○○の立場を
      入れ替えたの。
      その証拠が
      この卒業証書。』

○○「この卒業証書が証拠…?」

飛鳥『      そう。
        ○○は
      卒業証書を実は
      貰ってなかった。
        だから、
       あの夢には
        私の顔が
      無かったでしょ…?
        それは、
        あの夢が
     幻想に過ぎないことを
     表しているからなの。』

○○「   俺が見ていたのは…
        『幻想』
        だったのか…?
      じゃ…じゃあ…!
     な、なぜ今こうして
       飛鳥と俺は
       話せている?
     飛鳥も…もしかして
     死んでいるのか…?」

       飛鳥は目を下に背けて、
        涙を浮かべながら
        首を横に振った。

飛鳥『      ……ううん…。
         でも…私は…
         ○○ともう…
         会えることは…
         ……ないかも…。』

○○「…な、なぜ!?」

飛鳥『               だって…
           【契約】を
         してしまったから…。』

○○「     け、契約…?
        な、なんで
        そんなことを…」

飛鳥『 ○○を
      “助けたかった”  から…。』

   
○○「       俺を
      助けたかったから…?」


飛鳥はコクっと縦に頷いた。

飛鳥『こうするしか…

   こうするしか…

    こうするしか…!

     方法がなかったのッ…!』

飛鳥は目を覆い、蹲る。

どうやら

俺は飛鳥に

かなり辛い想いを


させてしまったのかもしれない。
  

俺は

そんな飛鳥を見ていて

とても辛かった。

自然とまた涙が出ていた。

飛鳥『     このCD…
        ○○に…
     …聴いてほしい。』

彼女はゆっくり立つと、涙で言葉を振るわせながら一つのCDを見せる。

○○「    この“C”って
      アルバム曲を?」

飛鳥『     うん…!
       私のことも
      ○○との青春も
   全て“そこ”に詰まってるから。』


○○「…分かった。絶対聴くさ」

    飛鳥『ありがとう。』

     また、ひとつ思い出した。

    俺は

     この飛鳥の笑顔が

      たまらなく

       好きだったんだ。

      飛鳥『○○。』

      ○○「ん?」

    飛鳥『ずっと好きだよ。』

    ○○「俺も好きだ、飛鳥」


俺のその返事を聞いた刹那、

彼女は

口を隠して

ふふふと笑いながら、

とびきりの笑顔で

微笑んでくれた。

     うっすらと

        その笑顔が消えていく…。

彼女の姿と笑顔が

消えたと同時に

また別の部屋に

俺は移動していた。

その部屋は暖かい色の照明に照らされ、白い無地の壁と少し傷のついた床に、可愛らしい薄ピンクの勉強机と椅子が並んでいた。

勉強机には

俺と飛鳥が

ツーショットで笑いながら

最寄り駅で撮った画像を

現像した写真を入れた

写真立てが置いてあった。

それと

飛鳥のものだろうか…?

そこにあった黄色のiPodと先端がピック型の有線イヤホンが床に落ちていた。

iPodはまだ使えるようで、

俺は飛鳥が保存した曲から

あの“C”を探し当てた。


Cのアルバムのアーティスト名には
こう記載されていた。

「Base Ball Bear」。


思い出した。

俺が好きだった

アーティストだ。

飛鳥とは

よく片耳ずつで

イヤホンを交換しあって

“ベボベ”の曲を

聴きあったっけ…。

なんだか懐かしいな。

iPodのボタンのところに

何粒もの涙が付着していく。

“C”のアルバムを再生すると、

次々と

俺と飛鳥の過去、

飛鳥との出逢い、

飛鳥との青春、

そして飛鳥との“別れ”が

思い出されていく…。

全ての曲を感傷に浸りながら

聴き終えたとき、

涙が溢れて止まらなかった。



そうか…

  そうせざるを得なかったんだな…

            飛鳥は…。



飛鳥。

   俺のために

        今までありがとう。




       そして、




      さようなら…。






      To Be Continued...