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米国債を売れば50兆円利益と円安是正 植草一秀解説「米官業日本政府支配」(紙の爆弾2024年8・9月号掲載)

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植草一秀氏については下記も必読です。

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 前号に続き、植草一秀氏の政治・経済分析をお届けする。日本を戦時体制に導く「米官業のトライアングル」に関する、歴史を踏まえた解説である。(文責・編集部)

つくられた中国漁船衝突事件

 最初に振り返るのは、2010年9月7日に尖閣諸島近海で起きた中国漁船衝突事件です。海上保安庁が中国漁船の船長らを違法操業として取り締まり逮捕。これをきっかけに日本で中国脅威論が一気に高まっていきます。
 この事件はなぜ起きたのか? 日本と中国の間にはもともと「棚上げ合意」がありました。たとえば、読売新聞1979年5月31日付の社説には、「尖閣諸島の領有権問題は1972年の国交正常化の時も、昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、いわゆる『触れないでおこう』方式で処理されてきた。つまり、日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた。(中略)約束した以上は、これを遵守するのが筋道である」とあります。
 これに基づいて日中漁業協定(2000年6月1日発効)が結ばれ、尖閣諸島がある北緯27度以南の水域には新たな規制措置を導入しないことになりました。現実的には、両国は自国漁船のみを取り締まり、相手国漁船の問題は外交ルートで注意喚起を行なうとしていました。
 ところが2010年6月8日、菅直人内閣が発足初日に「尖閣諸島に関する我が国の立場は、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというものである」と閣議決定して、「棚上げ合意」を一方的に破棄したのです。
 これに基づき、国土交通省は尖閣海域の漁船取り締まり基準を、日中漁業協定から国内法に転換。そして、冒頭の事件が起きます。すなわち、従来であれば漁船を追い払うだけだったのが、この日の海上保安庁巡視船は一隻の中国漁船を接触するほど追い上げ、あげく漁船と他の巡視船がぶつかり、さらに3時間も追い回した末に漁船と乗組員を確保し船長を逮捕した。要するに日本が作り出した事件だったのです。
 では、この事件の主演・企画者は誰か?それを示す事実経過がウィキリークスで暴露されており、当時の国交大臣・前原誠司氏だったことが明らかになりました。鳩山由紀夫内閣の2010年2月2日、カート・キャンベル国務次官補(当時)が来日しました。彼は小沢一郎氏と面会し、ソウルを訪問した後、米国政府に「日本での重視を、鳩山・小沢ラインではなく菅・岡田ラインに変える」旨を報告しました。
 この報告をする前に、キャンベル氏は前原氏と面会していました。前原氏は「小沢さんは相手によって話の内容を変えるから注意した方がいい」とキャンベル氏に進言。さらに彼は、「このまま行くと沖縄県知事選で伊波洋一候補が勝ってしまうかもしれない」とも米国側に警告しています。
 その後、キャンベル氏の報告通りに、鳩山氏と小沢氏は政権の中枢から外されて、菅直人氏と岡田克也氏を中心とする菅内閣が同年6月に組閣されました。また11月の沖縄知事選では伊波氏ではなく現職の仲井眞弘多氏が再選されています。

ウクライナ戦争と台湾有事

 この中国漁船衝突事件の経緯は、実はウクライナとロシアが戦争に至る経緯と、非常によく似ています。

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