中間地点

上機嫌と
不機嫌
その中間地点に
自分の感情を置いてみたい
静かな水のように
どっしりと構えてみたいが

去年の焦げるような夏
父親を求める太宰治が
愛おしくおもえた
疎外されたこころ
どうにも耐えられない
祈るような気持ちで手に取った
フランツ・ファノン

おみくじを引くようにして
適当にページを開く
何か、ひとかけらでもいい
日本文学全集の
三島由紀夫
古びた図書館の
片隅で
石ころみたいに
転がるおれ
おれはおれを整える
ことばを求めていた

疑問と魅惑に揺れながら
むさぼるように読んだ
坂の上の雲
国家と個人のいのち
日本海海戦の水兵
血みどろの苦しみは
おれ自身の痛みになってゆく

中間地点を求めて
水平状態を求めて
のたうちまわる
ずっと続いてゆく




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