ボクの友達は変わっている#2
2時間目の国語の授業が終わり、ツヨシはキョロキョロと回りを気にしながら、柴犬の巾着袋を持って、教室を出ていく。
鉄郎はそれを横目で観察し、そっとツヨシの後を付けていった。
人気のない階段の踊り場までやってきたツヨシは、階段にヨイショと腰を下ろす。
そしてペロッと舌を出しながら、巾着袋をゴソゴソすると、そこからクッキーを出して食べ始めた。
「美味しそうだね。」
「ひょわぁー!!あっ…!」
不意に声をかけられて、ツヨシはビックリしてクッキーを落としてしまった。
「ててて鉄郎くん!?どうして??」
階段の下の壁から、鉄郎がひょっこり顔を出して覗いていた。
「北島くんがいつも2時間目の休み時間にコソコソ出てくから、気になって付けてきたんだ。おやつ、持ってきちゃダメだよね?」
「うー…、ボク、どうしても給食の時間まで我慢できなくて、3時間目からお腹の音が鳴っちゃって…。だから…」
しどろもどろになりながら、ツヨシは鉄郎に説明しようとする。
「…ふーん、そっか。じゃ、先に教室に戻るよ。」
鉄郎は興味なさそうに言うと、後ろを振り返り、ヒラヒラと手を振った。
「えっ?ちょっと待ってよ!それだけ?先生に言わないの?」
「別に。気になったから見に来ただけだし。先生に言えば、北島くん困るんでしょ?他の子にバレないようにしなよ。特に西田にはさ。」
「ありがとう…。鉄郎くんて優しいんだね。」
ツヨシは両手を組んで、キラキラした目で鉄郎を見つめた。
「ち、ちょっと!気持ち悪い目で見んな!早くお菓子食べて教室に戻りなよ!」
そう言うと、鉄郎はあたふたしながら走って行くのだった。
えへへ…と笑いながら、安心したツヨシはまたクッキーを食べ始めた。
「あ、水筒持ってくればよかった。口がパサパサだ。」
5時間目、先生が教壇で話し始める。
「えー、5時間目は、来月のクラス会で何をするか、みんなで決めたいと思います。何か提案のある人は挙手してください。」
《クラス会?》《何するの?》
《めんどくさい》《みんなでドッチボールでいいじゃん!》
ざわざわと話し声が聞こえるが、なかなか手を挙げる人はいない。
すると「はいはーい!」と笑顔でゆうこが元気良く手を挙げた。
「はーい、西田さん、どうぞー。」
「クラス全員で、劇がやりたいです!」
「ふむ、まずは演劇ですね。他に意見がなければ、演劇にしようと思いますが?」
そう言いながら、先生は黒板に記録する。
「ドッジボールがいいです。演劇なんて面倒だよー。」
1人の生徒が手を挙げた。
「うーん、ドッジボールは体育の時間にやりますからね、出きれば別の事にしましょう。」
そう先生に言われ、それ以外の案は出ることがなく、クラス会はゆうこ発案の演劇をする事に決まった。
皆がパチパチと拍手する中、「えっへん!」となぜかゆうこは鼻を高くして威張っていた。
めぐむはこんな中でも、顔を上げたまま鼻提灯を膨らまして眠っており、鉄郎は頬杖をついて「はぁ」とため息を吐く。
一方ツヨシは、早くも今日の晩御飯の予想をしながら幸せそうな表情をしているのだった。
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