【タル空】おてもと、拝見します

タルタリヤと一緒に箸の練習をする空くんのお話です。

ひとつ前に投稿した箸にまつわる話の短編Ver.も書いてしまいました…!!

タルタリヤ、恐るべし…!!←

・完全にギャグ気味
・タルタリヤの箸の扱いに関しては、弊ワット設定全開
・タルタリヤが最初に弓を練習した時の話捏造気味

※箸苦手なタルタリヤフルスロットルなので、カッコいいタルタリヤは居ません

参考資料
・鍾離先生のエピソード動画
【原神】エピソード 鍾離「想定外の支出」
箸に戸惑うタルタリヤのシーン
・魔神任務 璃月編の瑠璃亭を離れる前のタルタリヤの箸の練習シーン


「本当にいいんだな…?」

「あぁ、俺も覚悟はできたよ。」

いつもより真剣みを帯びた表情をした空。

そんな空と同様、いや、あるいはそれ以上に真剣な表情のタルタリヤが言葉を交わし合う。

どうやら余程重要なやりとりをしているようだ。

「ならいいんだ。俺も準備万端だ。」

「それじゃあ、行くよ…!!」
バッ

空の言葉にアイコンタクトをしてから意気込んだタルタリヤは、勢いをつけて手を振り上げる。

そして…


「どうかな?!」
プルプルプル

「いや、震えてる震えてるー!!!」
ガシッ

タルタリヤはキメ顔で箸を持った。

だが、その手はあまりにも震えっぱなしなので、得意そうな顔をしている分、絵面は何とも言えないものとなっていた。敢えて言うなら"台無し"の言葉がふさわしいだろう。

その震えっぷりがあまりにも危なっかしいので、空は慌てて箸を持つタルタリヤの右手と前腕を両手で抑えた。


瑠璃亭にて。

食事会をすることになったタルタリヤと空は、こうして璃月料理を舌鼓を打とうとしていた(ちなみに、タルタリヤが少々大袈裟に手配した為、貸切状態である)。その矢先に、改めてタルタリヤの箸の腕前を確認しようとして、現在に至るのであった。

(まだまだ危なっかしい手つきだな…)
「まさか、最初に弓を持った時もそうだったのか??」

まだ震えるタルタリヤの右手と前腕を押さえながら、空は冗談半分で言う。あまりにも、箸を持つ手が震えていることと弓が1番苦手、とことあるごとに口にしていたので、そう言ってみたくなったのだ。

しかし、空の言葉を聞いたタルタリヤは、ハッとした表情で、ほんの数秒空を見つめた後に…

「なんで分かったんだ、空…?!」

箸を持つ手とは反対側の手を口元に持っていって、わなわなと震えている。

「え…、いや、嘘だろ?!」

深い青の瞳を見開いて、あまりにも衝撃を受けた表情をしているので、空は思わずツッコみを入れた。まさかの予想外すぎる反応に、空自身も戸惑いを隠せない。

まさか、箸の苦手意識による体の反応は、弓を使い始めた時も同様に起こったものだろうか。

そんな推測が頭をよぎってならない。

パッ
「まぁ、それは半分冗談だとして…。」

(半分…?)

「でも、前よりもそんな上手くならなくてもいいかな、って思ってるよ。」

「え? 何でだよ?」

いつもの口角が上がった表情に戻したタルタリヤは、やや納得しかねる言葉を残しながらさらに言葉を続けた。空は疑問符を浮かべてはいたが、続けられた言葉を待つ。

(あんなに箸の練習をしていたのに…)

難しい、と言っていたことがあるほど、タルタリヤは箸の練習に熱心だったはずだ。それなのに、どういう風の吹き回しなのだろうか。

「だって…。」
スッ

(? どこを見て…)

てっきり続きを話してくれるのかと思いきや、タルタリヤはひと言呟いて、視線をやや下にしただけで黙ってしまった。それにますます疑問符を浮かべながら、彼の視線の先へ視界を移すと…

箸を持つタルタリヤの右手と前腕、それを抑えるように掴む空自身の両手が写り込んだ。

(そういえば、ずっと、掴んで、いた、な…………、っっっ!!)

先程は夢中で掴んでしまったが、よくよく考えれば、普段触れることがないタルタリヤの右手と前腕を掴んでいるではないか。

空の黒い手袋に包まれた両手は、すらりとしながらも鍛えられているのが分かるタルタリヤの箸を右手とその前腕、それぞれをがっちりと掴んでいる。
空がそれぞれの位置を両手で掴んでいるはずなのに、タルタリヤの片手、それはその存在感だけで、2人の体格差が分かってしまうほど大きさがはっきりしていた。

何より右手は手のひらの半ばまでの手袋の布の手触りが、前腕はタルタリヤの肌が出ている部分なので、手袋越しにも彼の体温が伝わってくるような…。

カァァァッ
(〜〜〜っ!!!)
バッ

「あれ? どうしたの、空??」

「な、何でもない!!」
バッ

意識した途端、顔から火が出るような熱さを感じた空は勢いよく手を離した。その反応が面白い、と言わんばかりに、タルタリヤは笑顔を浮かべてとぼけたように尋ねた。それに、反射的に空は赤くなった顔を隠すように勢いよく背けた。

(絶対、分かってやってる!!!)

タルタリヤの反応から、確信犯めいたものを感じ取ったので、悔しがる空であった。

(ほら、君のそういう反応が見れるからいいかな、って思ったんだよ)

不貞腐れたように顔を背ける空の反応を見て口角を上げたタルタリヤは思案する。正直に言えば、箸の苦手意識はまだ拭えないしどんなに強大な敵よりもある意味で厄介なものだ。しかし…

根気強く、ことある毎に練習に付き合ってくれる空。

先程、タルタリヤ自身の右手と前腕を掴んだ時に、心配そうな顔をしていた空。

また、掴んでいることを視線で訴えれば、顔を真っ赤にした空。

そんな空の優しさ、それと同時に、ころころと変わる表情を見ているうちに、これは箸に苦手意識があって、上手く使いこなせないうちにしか見れないものだとすると、自然と克服するのはまだ先でいいかもしれない、と思うようになった。

まぁ、こんなことを言ってしまえば、空はそんなのはダメだ、と言ってしまうかもしれないので言わないでおく。それに…

(その"ダメ"の理由が、俺のためにならないから、とか言いそうだからね)

そんな空の優しい気持ちにまだ甘えていたい気持ちもあるので、タルタリヤの箸の扱いが上達するのはまだまだ先になるだろう。

だが、それでもいいとタルタリヤは思っている。
何故なら…

その時間なら少なくとも、空の意識は、確実に自分へと向いているのだから。

そんな気持ちを抱えながら、不貞腐れる空を宥めようとするタルタリヤであった。

その後、タルタリヤの箸の練習にも付き合ったりするのであるが、それはまた別の話である。

-END-


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