【タル空】卯に染まりゆく珀金の月

空くんの誕生日のお祝いをするタルタリヤのお話です。

※弊ワットにおける空くん(と蛍ちゃん)は、4月生まれなので、それにちなんだお話です。

なので、このお話は、4月辺りの時期のお話だと思ってください…。

・私なりの4月生まれあるあるネタです。


「誕生日おめでとう! 空!!」

「あぁ、ありがとう…。」

「あれ? あんまり嬉しくなさそうだね??」

お祝いの言葉を紡ぐタルタリヤに対して、空は微妙な表情をしていた。

「言葉は嬉しいんだ。だけど、あることを思い出してな…。」

そうして、空は語り出した。

実は、今までに旅をした世界の中で、春は出会いの場が多い。所謂"新年度"というものだ。それによって、まだ知り合って間もない人に誕生日を聞かれても気まずい思いをしてきたのだ。

誕生日は他の人のお祝いを優先してしまう傾向がある空は、4月生まれであることをなかなか言い出せずに、過ぎ去ってから言うことが多いので、それに関しても気まずい思いをするからだ。

だから、空にとっては、複雑な気持ちを抱くのである。

幸いにも、テイワットには"新年度"という概念が薄いので、そのような思いはしなくて済むのだが、ふとした瞬間に思い出すことがあるのだ。

「じゃあ、俺がその分祝ってあげる!」

「えっ??」

「それなら、今までの、俺が知り合う前の空の誕生日の分まで祝ってあげられるでしょ?」

「あ、ありがとう…。」

思わぬ申し出に、空は思わずお礼を言った。そのような考え方もあるのか…と感心したのだ。

「それなら、誕生日プレゼントも用意しないとだよね…。何か欲しいものはある?」

「い、いいって。言葉だけで充分だ。」

「そう? あ、それなら、ここに来てから嬉しかったことはある??」

「唐突だな…。あ、そういえば、冒険者教会で、強くなるためにもらったダイヤモンドは嬉しかったな…。」

「ダイヤモンド…。空は宝石が好きなの??」

余程意外であったのか、深い青の瞳を丸くして尋ねるタルタリヤに対して、空は説明を続ける。

「そうじゃないんだけど…。前に本で調べた時に、偶然、俺の誕生石がダイヤだと知ったからかな。」

「なるほど…。そうだったんだね。」

「最初に砕屑を渡された時は、誕生日を知られたのかと思って驚いたよ。」

事実、冒険者教会から貰った時には驚きと同時に喜んだものだ。当時のことを思い出した空は、その気持ちを噛み締めて感慨に耽るように目を閉じた。

「ははは。でも、君にピッタリな宝石だと思うよ。」

「そうか?」

「うん。」

(初めて言われたな………)

タルタリヤの言葉が意外だったので、目を開けた空は問いかける。そんなふうに言われたのは初めてだったからだ。

(だって…)

パッと目を引くような容姿。

人を惹きつける魅力。

そして何より…

目標に向かって突き進む輝かしさ。

(君にピッタリだよ…)

「黒い服を着ているけどな…。」

クスッ
「ははは。それでも、君に似合っていると思うよ。」

「そうなのか…。」

まだ不思議そうにする空の様子があまりにも愛らしいので、それにますます笑みを深くするタルタリヤであった。

-END-

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