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現世(あるいはシャンプーとトリートメント)

先日、薬局で詰め替え用のシャンプーとトリートメントを買った。
いつも使っているやつだ。

他にも、T字カミソリとかキッチンハイターとか、
買い物リストと照らし合わせながら、必要なものを買い込んだ。
(わたしはこの、買い物リストと照らし合わせながら店内をめぐる時間が好きだ)

帰宅し、「ふっふっふ、いろいろ買い込んできたぜ」と
買ってきた品物を並べていく。

そこでわたしは気付く。
シャンプーとトリートメントを買ってきたつもりが
シャンプーとシャンプーを買ってきている。

実は、買い物に行く前に
わたしは妻に「なんか要る?」と尋ね、
「シャンプーとトリートメントを買ってくれるとありがたいけど、
どれを買えばいいか分からなかったら無理に買わなくていいよ」
と言われていたのだ。

わたしは
「はっ。それぐらい分かるっしょ。はじめての買い物かよ(笑)」
と言い放ち、胸を張って家を出ていた。
めっちゃ恥ずかしい。

間違えて買ってきたことに気付いたわたしは、
シャンプーとシャンプーを交互に見ながら
とても落ち込んだ。
2秒ほど落ち込んだあと、こう思った。

この程度のことで落ち込むな。
自分は、前世と来世の間のちょっとした時間を生きているだけで、
こんなのは長い歴史の中では、些細なことなのだ。

前世も来世も、そして現世も、
みずみずしく生きるのだ。
網で焼いたらジューシーになるくらいに生きるのだ。

と、ごちゃごちゃ考えていると
妻が「だから言ったじゃん!がっはっは」と
豪快に笑った。

みずみずしく生きるのだ。

画・ひろた

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