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福井「ホテルリバージュアケボノ」お幸ざい朝食の一品、むっちりもっちり大野の里芋煮(の参考レシピ)

二月初頭に福井・富山に旅行した。主目的はBリーグ観戦だが、福井に泊まるのは楽しみだった。私は福井の食べ物が好きなのだ。

今回は夕食もゆっくりできる旅程(スポーツ観戦目的の場合、ナイターが多いため夕食を外でとれない場合が多い)。事前に調べて気になる割烹に年末から予約を入れ、楽しみにして訪れた。
最高に美味しかった。食材が良いのはもちろん、手のかけ方がものすごく巧みなのだ。
例えば「昆布じめ四種」。

これまで私が知っていた昆布〆はいったい!?と思うほど絶妙な〆具合に、それぞれの魚の身の厚さや水分に合わせた炙り加減で仕上げた至高のひと皿。そう、昆布締め、炙り方、ひとつひとつの工程をものすごく拘っているのがひと目でわかる。食べるともっとよくわかる。すごかった…。
あふれんばかりに小筆でびっしり書き込まれたお品書きのどれを注文しても素晴らしく、ああ贅沢だな、福井は美味しいものがたくさんだなと幸せに眠りについた。

明けて翌朝。ホテルの朝食もこの旅の楽しみのひとつだった。

福井は郷土料理が実に多い土地でもある。つまり住む方が大切に伝えて来たということで、県民性が表れていると思う。土地の食材とその調理の仕方をとても大事にしている。
都内の福井料理店でもいくつか味わうことができるが、常時十数種もの郷土料理が小鉢に盛られ(本当にひとくちサイズなので気軽に選べる)、その中から好きなものを好きなだけ選べるスタイルの夢のような朝ごはん(郷土料理以外の定番和食も、洋風の品もたくさんある)。福井のお惣菜をこのホテルでは「お幸ざい」と呼ぶ。

普段朝はあまり食べない私だが、こういう時は精一杯欲張って選ぶ。

・おろしそば(福井名物。平たく太い蕎麦は香りが良く、辛味の強い大根も、削りがつおまで美味しい。かつて駅そば巡りをしていて知った。福井駅と敦賀駅の駅そばは特に美味しい。おすすめです)
・おから煮
・みそ汁(豆腐とわかめ、ねぎ)
・大野の里芋煮
・麸の辛子和え
・しらすおろし
・ごま豆腐

・冷奴
・勝ち栗
・ヨーグルト
・福豆(節分だった)

太字にしたのがお幸ざい、福井の郷土料理である。
以前から知っているものも、今回初めて知ったものもあるが中でも感銘を受けたのが里芋。大野市の名物だ。前日のドライブ中も道の駅で売られているのを見つけ、迷った末に買わなかったのをかなり後悔した、それくらいすごい。

仏教が盛んな土地なので精進料理も多く、そのどれもが美味しい

左下がその大野の里芋。
他の鉢と比べてわかる通り、とにかく大きい。一般的な里芋の二倍~三倍ほどありそうなサイズだ。それに料亭や割烹で出される里芋煮は大抵六方むきだがこれは違う。この大きく立派な里芋を、皮ぎりぎりまで薄くむくので形は丸いまま。そして食べると「!?」と思う。何これ、これって里芋??それくらい、他の里芋とはむっちりさ加減が異次元。周りから崩れて来るような煮崩れ感は一切ない。それほど実が締まってむっちりねっとりとした食感、これはすごい。たまらない。

「さすがホテル」と思ったのが味付けだった。大野の里芋は他所でも何度か食べたが、大抵は外側が濃い味で中までしみていなかった。田舎料理としては美味しいのだが、今回食べたものは違った。中までしっかりだしのような風味が浸透し、全体は柔らかな薄味。京料理に似た感じの味付けだ。これがいたく気に入って、ぜひ産地から取り寄せ真似したいと思ったが時は既に2月。出荷の最盛期は年内で、旬を過ぎた今は冷凍ものしか見当たらない。やむなく直売所へ行き、横須賀産の大きな里芋を買って来た。「ねっとり」と書かれていることにも期待。

手持ちの書籍やネットを駆使して福井の里芋の煮方を調べたところ、ちょうど今回宿泊した「ホテルリバージュアケボノ」の朝食担当の方が里芋の煮方を紹介する動画が見つかった。

一般向けに簡便化されているが(市販の顆粒だし使用)、手順はとても参考になった。その通りに試してみたのがこちら。

なんと・・・美味しいではないか。
もちろん大野産のあの「むっちり」には敵わない。だが煮崩れもなく、中までだしの味がしみてしっとりねっとりとしてとても美味しい。これなら近くの産地の里芋で時々つくってもいいなと思えた。
という訳で手順を簡単に。

《むっちりねっとり美味しい「大野の里芋」の煮方を真似た里芋煮》

◆材料
・里芋(食べたいだけ。今回は7個、皮つきで約400g使用)
・調味料(ほんだし、酒、砂糖、みりん、醤油。シンプルなので美味しい調味料を使った方が良い。特に醤油)
※分量は好みで。動画にも分量の記載はありません

◆手順
1)里芋の皮をむく。
六方むきではなく、なるべく薄く。たわしでこすり洗いしてむけるようならそれでもOK。
2)下茹でする。
皮をむいた里芋を鍋に入れ、水を張って中火にかける。沸騰しかけたらすぐに火を止め、水洗いして丁寧にぬめりを取る。
※この作業を丁寧にやると煮崩れしません
3)下煮する。
水を切って鍋に戻し、ひたひた程度の水と調味料の1/3~半量程度を入れて火にかけ、沸騰直前で火を止め、そのまま冷まして薄味を含ませる。
※この段階で濃い味にすると仕上がりが濃過ぎるのであくまで薄めに

煮始めとしてはちょっと水分が多過ぎました

4)本煮する。
下煮が完全に冷めてから再度残りの調味料を加えて火を点け、常にふつふつする程度の弱火で落し蓋をして一時間ほど煮る。火が強いと煮崩れるため、弱めの火でやさしく煮る。

5)煮汁が少なくなってきたら時々鍋を回して全体に煮汁が回るようにし、余分な水分が殆どなくなり、煮汁に照りが出てきたら火を止めてできあがり。いくらか冷めてからの方が味がよくしみて美味しい。
※味を含ませるため、全体的に調味料はやや少なめ。良いだしを使うと美味しくできます

白く見えるけれど中まで味がしみています

里芋煮は実家でもよく出たし、自分でも比較的よく扱う食材だが、ここまで丁寧に調理したことは多分なかった。
面倒がらずに下茹でとぬめり取り、下煮を丁寧にするとここまで美味しくできるんですね…。これまでの手抜きを反省。今後はちゃんと美味しくつくろうと心を入れ替えたのだった。

美味しかった。
ぜひ大きめの里芋でお試しください。

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