宿題は絵日記
これから語る物語は私が小学三年生の一夏の話だ。
小学生にとって夏といえば夏休み。
夏休みといえば、馬鹿みたいな量の宿題があった。
宿題の中には「絵日記」という厄介な課題もある。
夏休みが始まると、終業式から3日3晩、休む間もなく宿題に取り組んだ。とにかく、馬鹿みたいな量の宿題を終わらせることが目標だった。
もちろん、絵日記も完成させた。夏休みの3日目になってもう完成だ。まるで「未来絵日記」のようだった。
夏休みが終わり、宿題の中に絵日記も提出した。
先生から、夏休みの絵日記を音読するよう指示が出た。
7月23日、箕面スパーガーデンに家族で行ったことになっている。
うそだ!
「次」と先生が順番に指名していく。
8月1日、和歌山の海に行ったことになっている。
うそだ!
8月11日、東京のおばちゃんに会いに行ったことになっている。
うそだ!
8月15日、北海道で牛に乗ったことになっている。
うそだ!
8月26日、ハワイに行きたいと思っていることになっている。
これは願望だ。
8月29日、お父さんが家を出て行ったことになっている。
これは悲しい事実だ..
.8月31日、学校に隕石が落ちればいいのにと書いてある。
これは切実な思いだ。
なぜこの絵日記が嘘だと分かったのかは、このデタラメな日記を書いた連中と私は、夏休みの間ずっと公園で一緒に遊んでいたからだ。
みんな大阪から出たことなどないし、先生もそれは分かっていた。
夏休み中、先生がプールの監視員をしている時に北海道に行ったと発表した同級生は、お金が掛からない学校のプールで泳いでいたことがバレた。
家庭の事情については、先生は言葉を失った。学校に明日隕石が落ちればいいと書いた生徒には、先生も苦笑いしていた。
毎日の食事の回数と食べたおかずを絵日記に書いた強者もいた。
それにしても、この嘘ばかりの絵日記は、クラスの誰もが自分の願望や夢を描いたものだった。
先生も他の同級生も、それらの絵日記に笑うべきなのか、悲しむべきなのか、戸惑った。私も戸惑った。
「夏休みもあと少し、宿題はちゃんと終わらせようー」と、全国の公立小学生に伝えたい。
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