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独り言は悪いことではない。

精神科に勤めていると必ず一人はいる。
ひたすら独り言を言う患者さんだ。
自分の頭の中に存在する妄想世界の誰かと話しているようだ。
時に笑ったり、怒ったり。
私たちはそれを通称「独語」と呼ぶ。

傍から見ると何とも奇妙だが、本人は至って懸命に話していることが多い。
あまりに激しい時は「〇〇さん」とスタッフが名前を呼んで現実世界に戻すこともあるが、基本的にはそっと静観していることが多いもの。
「それ」が症状であり、また彼らなりの病気との付き合い方だから。無理にやめさせないほうがかえっていい場合もあるのだ。
むしろ、独語を言うことで安心しているのかな、と思う時もある。


私も「独語」というほど病的なものではないが、独り言を言うのはわりと好きだ。
私の場合は敢えて「意識的」に独り言を言うことが多い。

独り言を口にしている時、自分の中でごちゃごちゃに絡まった考えを一度吐き出して整理できる。


単独で活動しているyoutuberなんかは撮影の際にカメラに向かって一人で話していると思うが、それに近い気がする。

自分の考えや思いを声という「音」として発信し、耳からまた受け取る。そして頭の中でさらに深めたり新たな考えに生まれ変わったり。
もちろん部屋で私一人しかいない時に限ってできることだ。
他人がいる時にはとてもじゃないが見せられない。奇妙に思われてしまいには病院を勧められるのがオチだ。

自分でも「変なことしてるなぁ」と思うが、これが意外と楽しい。
これが無意識にやるようになると怖いな。
あくまで「意識的」に…。

今日も病棟内でまた誰かが見えぬ誰かと談笑している。








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