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特別ではない介護食-その2

自分のご家族を施設に預けている方は、施設が提供する食事は全てお年寄りの体を考慮したうえで献立が作られているとお考えかもしれません。

ちょっと高級な有料老人ホームのWebサイトなど見ましても、食事についてはアピールポイントにしている施設がほとんどです。

しかし現実には、現場で献立を考えている栄養士のほとんどは20代から30代の若い人で占められていて、よほど介護や介護食について興味を持っている人でもなければお年寄りの体について学ぶこともしませんから、あまり深く考えずに今までのパターンを繰り返している場合がほとんどです。

これが学校給食の現場だと、栄養について法律で細かく規定されている部分もあり、予算管理も含めて栄養士の力量が問われますし、漫然と適当に献立を立てる事など出来ない仕組みになっています。

しかし老人施設の場合、提供する食事について法律で何かしら規定があるわけでもないですから、手を抜こうと思えばいくらでもやれてしまうのが現実です。

実際に現場で提供されている料理の内容を見ても、特にお年寄りを意識した内容になっていないモノが多いです。

ただ、私は現場の献立が「お年寄り向け」になっていないことは、決して悪いことだとは思っていません。

介護施設の食事は「通常食」と「形態食」に別れていまして、形態食というのは歯が悪いとか嚥下機能が悪いなどの理由で、普通に食べ物が食べられなくなった方向けの食事の事です。具体的には「刻み食」や「ミキサー食」などがこれにあたります。

一方で通常食が食べられる方は、お年寄りであっても若い人と同じ様に噛む事や飲み込むことが出来るから通常食で大丈夫なわけです。

そうであるなら、機能維持の面からもなるべく普通に顎や喉の筋肉を使う食べ物を食べた方がカラダにとってよい事になります。

私が関わる施設でこんな事がありました。施設さんの要望で昼食メニューの献立に何か変化をつけてほしいという要望です。

担当の栄養士は大卒2年目の女性だったのですが、提案したメニューはカフェなどで流行している「タコライス」でした。

施設のお年寄りに「タコライス」と言ったら海で泳いでいるタコが入ったご飯だと思われるでしょうが、カフェで流行のタコライスはスパイシーなミンチ肉の炒め物と生のトマトやレタス、それにチーズまでご飯にのせて食べるメニューです。

普通に考えてお年寄り向けのメニューではありませんが、若い感性はそんな事お構いなしです。

私も現場でタコライスを作りながら、実際にお年寄りがどんな反応を示されるか興味津々でしたが、総じて良い反応でした。

これと言ってクレームもありませんでしたから、タコライスはその後も定番として提供していく事になりました。

普段刺激の少ない生活を送るお年寄りにとって、一日三度の施設での食事は一日の中の大きなイベントです。その食事でこんな風にカフェ風の献立が出てくる事は良い刺激になるのではないでしょうか。

自宅で介護をされている場合でも、通常食がOKな人でしたら時にはこうした冒険をする事をおすすめします。

※元記事は「食べごろclub

*アゼリアカルチャーカレッジ
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