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昭和の夏。ホオズキが赤くなる頃

私の実家の裏庭には、古い柿の木があり、その柿の木の下に沢山のホオズキがありました。お盆のこの時期になると、柿の実が赤くなる前にホオズキの実が一斉に赤く色づきはじめます。

ホオズキというと仏花に使う観賞用と思われるかもしれませんが、当時の田舎の子供達にとっては、風船の様に加工して遊ぶ「おもちゃの実」と言ってもいい存在でした。

どうやってホオズキで遊ぶかですが、まず良く色づいた実を選んで取ってきます。

そして外側のキレイな赤い葉のような部分は剥いて捨ててしまい、中の実の部分だけを使うのですが、外葉を外すと中から丁度プチトマトの様な実が出てきます。

その実の部分を、まず指で揉んで柔らかくしていきます。

ただしここでチカラ加減を間違うとホオズキの実は簡単に潰れてしまいますから慎重に揉んでいきます。

この「揉む」作業をいい加減にやってしまうと、後で失敗する原因になるのでここは気を引き締めてしっかりと揉んでいきます。

充分に柔らかくなった所で、実を慎重に土台から外します。

土台から取り外したホオズキの実を、実が土台と接していた部分(ここだけ皮がない)、だいたい直径3〜5ミリくらいの丸い部分になるのですが、そこを爪楊枝や竹串などの先の尖ったもので突いて穴を開けます。

皮の部分に穴を開けるとそこから一気に中身が飛び出して破れてしまいますが、土台と接していた丸い部分だけを上手に突いてやると、皮を破ること無く中身を外に絞り出すことが出来ます。

この中身を絞り出す作業が実は一番難しい所で、最初の揉み方が足りないと、中身が塊のままなので小さな穴からは絞り出すことが出来ません。

しっかりと揉んで中身が柔らかくなっていても、ちょっとしたチカラ加減で楊枝で開けた穴が破れて広がってしまいます。

そうなったらもう失敗ですので、とにかく慎重に絞り出します。

中身を全部絞り出したら、水道から細く水を出して実の内面を洗います。何度か水を入れて出してを繰り返すと完全に中身が外に出てまあるい皮だけが残ります。

そこにフッと空気を吹き入れたら直径2センチほどの小さな風船が出来上がります。

次に切れ込みを入れて先をラッパ状に広げたストローを口にくわえ、ストローのラッパ状の先端にこの風船をのせて下から息を吹いて風船を浮かばせて遊ぶのですが、私はいつも風船が出来た段階で満足してしまい、最後のストロー遊びはやりませんでした。

ちなみにホオズキの実は苦くてとても食べられた味ではありません。

まさにアナログな遊びですが、小学生の低〜中学年頃までの毎年の楽しみでした。

通常のお盆が終わってしばらくすると、夏休み最後のお祭り「地蔵盆」があり、これが終わるといよいよ夏休みも終わりだなと思い寂しくなったものです。

田舎の夏には花火大会などの派手なイベントは無い代わりに、伝統に根ざした風情のある暮らしがありました。

60年近く生きてきて、懐かしく思い出すのは暮らしの中のそうした小さな遊びや空気感ばかりです。

今の子供達が歳を取ったときに、一体どんな風景を思い出すのか…。

良い風景であり、記憶であることを願うばかりです。


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