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閑話休題「宗教の役割が終わる時に」

日本に限らずですが、世の中がどんどん「お金」に左右されるようになるにつれ、古い価値観や風習が影を潜めるようになりました。

社会の価値観が「稼ぐ人」を立派な人と認める様になったせいで、伝統的な価値観や道徳観などが後ろに追いやられた感があります。

効率良く稼ぐためには都会で暮らす必要が出てきますので、田舎に実家があっても都会で仕事を持ち、家族を持ち、結果的に田舎の実家を継ぐ者が減り続ける事になります。

私もそんな風にして都会に出てきた人間の1人なのですが、実家を空き家にして帰ってこない人というのは比較的遠方に住んでいる事が多いので、実家の手入れは勿論のこと、先祖代々のお墓も守ることが出来ません。

都会で育った方にはわかりにくいかと思いますが、田舎のお墓というのは山の中にある事も多いので、最低でも年に一度は草刈りなどの大掃除をする必要があります。

それをやらないとお墓まで行く道すら分からなくなる事もありますし、草が伸びて何処に墓石があるのか分からない状況にもなりがちです。

つまり都会に住んでいたのではとても維持管理出来ないのが田舎のお墓です。

私の場合は、田舎に住む親戚にお墓の維持管理をお願いしていたのですが、その親戚が今年亡くなってしまい、頼める人が居なくなってしまいました。

そんな訳でとうとう墓じまいする事になったのですが、これはお寺さんとの縁も切る事を意味します。

墓じまいに当たってお骨を引き上げてきたり位牌を持ち帰ったりと色々面倒な事をするわけですが、持ち帰ったお骨や位牌を新しくどこかのお寺さんの檀家に入って、お墓も新しく作って供養する方がどれほど居るでしょうか。

多くは「永代供養」をしてくれるお寺さんにお骨だけ納めてお墓は作らないパターンなのかと思いますが、都会にあるそうしたサービスを提供してくれるお寺さんは、何だかとてもビジネスライクですし宗教的なありがたみに欠ける気がします。

そうすると伝統的な仏教での供養はもういいやといった気持ちになるもので、私も自分のお墓を作るつもりはありませんし、墓じまいした後に別途新しいお寺さんの檀家に入る気もありません。

結局どうするかは、子供達とも相談して決める事になりますが、伝統的な宗教との関わりが薄くなって行く事は間違いないと思います。

そんな風に考えると、日本に仏教が根付いてから千年以上の時が経つ中、大きな宗教観の転換点に居るのが今だと感じます。

今の二十代や三十代の皆さんが老人になる頃には、檀家の支えで生計を立ててきたお寺さんはほとんど残っていないかもしれませんね。

まあ、その頃には私はあの世に行っていますので心配しても仕方ないですが…。

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中嶋洋二郎
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