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閑話休題「兄の梅酒」

私には四歳年上の兄が居たのですが、もう七年前に亡くなりました。自死でした。

詳しくは一度記事にしていますので書きませんが、お酒が原因のひとつでした。

その兄が大学時代から恐らくは死ぬまでずっと作り続けていた「梅酒」があります。

義姉によると、毎年青梅が店頭に並ぶ時期になるといそいそとスーパーに出かけていき、大量に梅を買い込んできては嬉しそうに仕込んでいたそうです。

兄夫婦は二人とも酒のみでしたので、夫婦でその梅酒を毎年楽しんでいたのだろうなと思いますし、兄が梅酒を仕込んでいた時の話しをする義姉の表情がとても柔らかかったので、きっと義姉にとっても兄の梅酒は好物だったのだろうと思います。

その梅酒ですが、いわゆる普通の梅酒とは違うもので、砂糖は全く使いません。

漬け込む焼酎も一般的に使われる甲類の焼酎ではなく、「本格焼酎」と言われる麦焼酎を使っていました。

兄の梅酒は、買ってきた梅を普通の麦焼酎に漬け込むだけの至って単純なものでした。

だいたい漬け込んで三〜四日ほどで梅の香りが程よく焼酎に染み出してきますので、その段階で焼酎を別の瓶にあけて、もう一度同じ梅で同じ様に焼酎を漬け込みます。

今度は二度目ですからもう少し長く五〜七日ほど漬け込み、今度も同じように別の瓶にあけてしまい、もう一度同じ事を繰り返して終わりです。

私も兄が独身時代にその梅酒の作り方を教えて貰い、以来ほぼ毎年その梅酒を楽しんでいます。

味は焼酎に梅の香りが柔らかく移った感じの味わいで、これを炭酸で割って飲みます。

居酒屋で飲む梅サワーを想像してもらえば分かりやすいですが、甘くないですし、梅の香りが爽やかでとても美味しいです。

特に暑い時期にこの自家製梅サワーは抜群に美味しく感じられ、勝手に夏バテ防止ドリンクと名付けてガブ飲みするのが、兄が亡くなってからも続く年中行事です。

どうしてこんな記事を書いたかというと、今年はとにかく梅が高い。

例年だと1kgあたり980円かそれより安くで買える梅が、今年は近所のイオンで1,780円もするので中々手が出ません。

高い高いと思っている内に、青梅の時期はそろそろ終わりを迎え、熟した梅干し用の梅が出回り始めました。

梅干し用の少し熟れた梅でも同じ様に作れるのですが、なんだか焦りを感じていたら、今日ようやく通常の売り場とは別の「産直コーナー」で980円の梅を見つけたので早速買ってきました。

お陰様で何とか今年も「兄の梅酒」を楽しむ事が出来そうです。

私が「一番搾り」と呼んでいる一回目の梅酒が出来たら、とにもかくにも天国の家族達と乾杯したいと思います。

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