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業務委託の功罪

老人向けの介護施設の多くは、食事づくりを外部の専門業者に委託しています。

理由は様々ありますが、一番は経営面での数字のコントロールが容易になるからです。

介護施設の専門分野はあくまで「介護」であって「調理」ではありませんから、予算取りだけして後は専門の外部業者に委託してしまえば、本来業務である介護に集中することが出来る理屈です。

施設の側から見ればそれで良いのですが、施設を利用するお年寄りの側から見た時に、これは必ずしも良い結果に結びつかない事があるのですが、理由は簡単です。

それは委託された業者も儲ける必要があるから。

施設から厨房業務を委託されるのは、当然ですが給食業務の専門企業です。

老人向けの施設に限らず、病院や学校なども手広く引き受けて事業を展開するのが普通で、比較的規模の大きな会社もこの分野に参入していて、それぞれしのぎを削っています。

こうした業務請負タイプの事業では、最初に契約を結ぶ段階で売り上げがほぼ決まってしまいます。

実際に提供した食数によって多少の上下はありますが、街中のレストランの様に曜日や天気で売り上げがジェットコースターの様に上下するといった事はありません。

そんな状況で利益を最大化する為に請負業者が出来る事は、人件費と原材料費をギリギリまで切り詰めることだけです。

人件費を切り詰めようと思えば、レギュラーで働いてくれるスタッフの数を減らす事になります。だからと言ってスポットで働いてくれる人を雇って忙しい時間帯だけそれでカバーしようと思ってもそんな人材は中々確保出来ません。結果的に本来は多人数でやるべき業務を少人数でやらざるを得ない状況が日常化します。

するとどうなるかと言うと、本来の提供時間よりもずっと早い段階で食事が出来上がっていないことには、盛り付けや個別対応のチェックなども含めて間に合わなくなります。

勿論、現場では出来たものを冷蔵したり温蔵したり、味が落ちないように努力するのですが、やはり出来たてにはかないません。

原材料費を切り詰めるとどうなるかは、言わずもがなですね。説明の必要もないと思います。

そんなわけで結果的に施設を利用するお年寄りにとってはあまり嬉しくない状況が出来上がります。

これが外部委託ではなく、施設が直接調理師や栄養士を雇って食事づくりを行う場合は、外部委託業者の「利益」の部分が丸々食材費や人件費に使えますので、自ずと食事の内容も良くなる場合があります。

とは言っても、これは雇用した厨房スタッフのレベルに大きく依存しますのですべての場合で業務委託を使わない方が食事内容が良くなる訳ではありません。

そんな訳で世の中の介護施設の多くは厨房業務を外部の業者に委託する方を選択しているのが現状です。

自分の親や身内が介護施設を探す場合には、その施設の厨房が業務委託なのか自社運営なのか確認してみるのも、その施設の方針や理念の一端を知る手助けになると思います。

※元記事は「食べごろclub

*アゼリアカルチャーカレッジ
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