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一日一詩。

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言葉にできないコトバをことばにします。
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2022年11月の記事一覧

【詩】やりきった日に書く詩

やりきった満足感にみちみちた一日 そんな日の心が語る詩はおもしろくない なぜならば そこには、迷いがない そこには、恐れがない そこには、自己否定がない そんなときの言葉は 溢れ出てくるのではなく漏れ出てしまう 滲み出るのではなく絞り出してしまう 曝け出すのではなく映し出されてしまう そんな言葉はおもしろくない 自己満足に別れを告げ 疑うことから始めよう 幸いにも明日はもう一度くるようだ 静かに走り出す、憂鬱な目覚めに向けて

【詩】生きてることを人は忘れる

『死は等しく誰にでも訪れる』 だれかが言っていた とかく人間は当たり前のことを見逃しがちだ 死は確かにどの人間にも訪れる でも、そんなことよりも忘れちゃいけないのは 死が訪れるその瞬間まで 今度は生がどの人間にも訪れるということ 仮に奇跡的に死を逃れる人がいたとしても 生きることからは逃れられないということ

【詩】「ただいま」

「ただいま。はぁ」 いつの日にかため息とセットになった 「ただいま」 真っ暗で誰もいない空間でも 帰ってくる場所 そこは我が家 無意識にぽつり「ただいま」 口が勝手に 習慣は恐ろしい 今日も一生懸命に生き抜いた だからどうしたと素直に思う 僕の存在で誰かが救われたわけでもなし 僕の言動で誰かが笑顔になったわけでもなし 今日も今日とて今日が終わる 「ただいま」は終わりの始まりなのかもしれない 「ただいま」が宴の始まりだったあの頃が懐かしい 思い出すほどに今日がおわ

【詩】青、それは僕の好きな色

青、それは僕の好きな色 小さい頃、空を見上げるのが大好きだった 毎日の違う青、右から左で違う青 みんな同じ青だけど、みんな同じ青じゃなかった 青は奇跡の色だと思った 僕は大人になっても夢を追いかけていた 心の中で追いかけていた夢を 体全部で追うようになり 自分一人の世界で追いかけていた夢を 全世界で追いかけるようになっていた 大人になってもそんなことをしていると 「青二才の若造」とか 「あいつの言葉は青臭い」とか 言われる 僕の大好きだった青は未熟な色だった 僕は

【詩】終わりがくるまでは

僕たちはせっせと答えを探す 答えが見つかると安心する でも、しばらくすると、不安になる そんなに単純じゃないはずだ これは疑いであり、望みでもある 僕はもっと複雑なはずだ 単純明快なはずはないし、そうであっては困る もっと複雑で難解でややこしくわかりにくいはずだ そうでなければ終わってしまう 終わってしまうのは困る、終わってしまうから だからこそ旅は続く、終わらない 終わったっていいんだ 本気でそう思っている でも、終わってしまうのは困る、のです、

【詩】イミとかいう魔法

イミ。 これは人間が使える魔法の一つ。 これによって人は単なる線のつながりを文字と認識し、文字をつなげて文章へと変化させる。文章を読むことで人は何かを理解し、時に感動し、時に救われ、時に涙する。 これが魔法でなくてなんであろうか。 しかも、驚くことに多くの人類はこの魔法を、さも当たり前に使う。 呪文すら唱えることもせずに。 でも、だからだろうか。 呪文を唱えていた頃はまだ自分たちが魔法を使っているのだと、そう思っていたに違いない。 けれども、時が経ち、魔法は当たり前になりす

【詩】チャンスを逃した時には

チャンスを逃した時には 「またね」 とつぶやこう そうしたらなんだか また出逢える気がしてくるでしょ

【詩】理性に負けるな、感性よ。

なんの為にやるのか なんの目的があるのか なんの意味があるのか なんの価値があるのか 理性は私に問いかける その声は大きく、今や権威をもっている 感性は内気である 囁くようにしか私に声をかけない 私は耳をかたむける あなたの味方よ。と心を開く しかし、感性は内気なままである そう簡単には心を開かない 理性は図太く、無神経なところがある 聞いてもないのに間を割って話に入ってくる 私はそんな二人の間をいつも取り持たなければいけない そんな性格の二人だから、すごく馬が合うと

【詩】僕の人生は、かわいている

毎朝、同じ時間に目を覚ます 同じ珈琲 同じ朝食 同じ顔と髪型 同じ時間に家を出る 同じ道 同じ速度 同じ場所 同じ時間にそこに着く 同じ仲間 同じ景色 同じ仕事 同じ時間に家に帰る 僕の人生は乾いている 乾いたレンガを積み重ね、何かを作った気になっている そうしないと、枯れた人生に気づいてしまいそうで 崩さないように、気づかないように 慎重に、かつ、鈍感に 毎朝、同じ時間に目を覚ます でも、その日の気分はいつも違う 同じ珈琲 でも、香りと味はいつも違う 同じ朝食 

【詩】何者にもなりたくない僕。

何者かになりたかった気がする。 何者かに憧れていた気もする。 でも、今はちょっと違くて。 何者かになってしまうと、そうでないものにはなれない気がして。 何者かになってしまうと、それというレッテルが貼られる気がして。 何者かになってしまうと、僕自身がそれになってしまう気がして。 何者かというのは僕を説明する全てではどうしてもないような気がして。 やっぱり僕は何者でもない気がして。 何者かになる違和感と何者でもない不安。 深い靄の中で何者でもない魅力に憑りつかれそうになる。

【詩】煩悩まみれの10分間

毎朝10分間、瞑想をする。 何が正しいかは分からない。 「呼吸に集中するべし」というにわか知識だけを携えてこの瞑想はスタートした。 今ではそれだけでなく、日々、独自のテーマが加わる。 それは最近何を学んで、どんなにわか知識を携えたかによって変わる。 今日のテーマは、 「座る、それ以上でも、それ以下でもなく」 10分間が始まる。 無意識に何かを考えてしまう。 これは、それ以上。 どうも座っていられない。 これは、それ以下。 座る、それ以上でも、それ以下でもなく。 じっと座りなが

【詩】わからなくなるとき

わからなくなるとき 今までの当たり前がわからなくなるときがある なぜ僕は右利きなのか なぜ今の仕事をしているのか なぜあの人のことが好きなのか なぜカメラを手放せないのか なぜ書いているのか なぜ生きているのか 考えなくても生きていられたことが突然、難問になる これは発見であり喪失である 見つけた種は、希望の種か、悩みの種か そして多くの場合、種は悩みの花を咲かせる 悩みの花もある種、美しい そしていつかその花は、散る

【詩】最高の銀は銀を磨くことでしか生まれない。

銀 いつからか永遠の2番にされた俺。 いい迷惑だ。 俺は俺でしかない、存在には1番も2番もない。 人間様はそうなんだろ。 もともとは金とも銅とも仲は良かった。 なのに、今じゃ金はどこにいっても偉そうで、銅はいつも俺を妬んでる。 あいつらが変わってしまったのも悲しいし、 なにより、自分があいつらをそう見てるのが哀しい。 社会の波には誰だって逆らえないんだって思ったよ。 レッテルなんて無意味だって言ってる自分が一番それを気にしてる。 あらがいたい。 俺は1番でも2番でもない

【詩】虹を知らせるおばちゃん

見知らぬおばさんが、急に声をかけてくる。 「虹!見ました!?」 ふと、顔をあげる。 そこにはうっすらと半分くらいの形の虹 虹を知らせてくれた見知らぬおばさんは、 虹を知らせるおばちゃんだった。