見出し画像

角度



花見に浮かれて決意表明
ヨーグルト食べてた
丸っこいスプーンの先端を手首にあてる
死に損ないの春に
例えば なにもしてくれなくてありがとうって
キリストの絵に画びょうをとりあえず眼と鼻の穴に刺してる
しょうもない春に
例えば 妻のおやつコソコソ食べる
おっとっと食べる
おっとっと一つおっとっと二つおっとっとおっとっとって
いい加減ちゃんと歩けって
一人つっこむ春に
例えば 机の引き出しの知恵の輪を
それぐらい思い通りになれよと
力まかせに引きちぎる八つ当たりの春に
アイスコーヒーについてくる紙ストローなんかじゃ
いっこうに取れやしない気管にへばりつく春に
哀しいと後どれだけ書けば本当の哀しみになるものかと
大学ノートに書き殴る筆圧ばかり強い
ゲシュタルト崩壊する春に茫然自失するわたしに無責任に誰かが言う
泣きたい時は泣いたほうがいいって
泣けば泣くほど苦しくなるのに
泣けば泣くほど 目の前の哀しみは
いつかの哀しみと
掛け算しあって
余計に手に負えなくなってしまうから
やっぱり一人で泣くのはやめたらいいよ
ですから私は
透析の日以外は
ガードレールの下にある花を手向けて
形からでも良い人になって
いつもの町も絶妙な角度からみたら
世界遺産みたいに重要で 
けなげでいじらしくてそれぞれすばらし
いって
思い込んで云い聞かせて
それを何度も何度も繰り返して
そのうちそれが習慣になって直らない癖みたいに染み付いて
皮膚になじんで当たり前になって
意地になって私はそうやって意地になって

そしたらもう
言葉にもならないような解読不能の感情なんかに
こんなにも張り詰めてしまうこともきっとなくなる

人の背中を憎むことに
飽きたのなら
誰のせいにももうできなくて
辟易しているのなら
一口サイズの不幸 ドロップみたいに
舐め飽きたのなら

それぐらい

やれって

たったそれぐらい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?