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下手くそな金管黄昏渡り廊下 (朝日新聞掲載)

夕方、放課後の教室、聞こえてくる金管の音、急ぐでもなく歩いた渡り廊下、聞こえてくる運動部の掛け声。

高校の家庭科の先生に
「食べ物の好き嫌いは言うものではありません。なぜなら食べ物の好き嫌いの多い人は人間の好き嫌いも多い人に見えるからです。」
と教えられて、私は妙に納得した。

食べ物の好き嫌いと人間の好き嫌いは関連性があると先生は言うのだ。

私はなんでも食べられるが、実は好き嫌いが多い。
出されたものはは我慢すれば、なんでも食べられる。しかし、自由に食べていいとなるとかなり偏食だ。

これは、誰とでもそつなくやれるが、本当の友達はかなり少ないということだ。

そして、偏食は年々酷くなっている。
友達も減っている。

恐るべし、食べ物の好き嫌いと人間の好き嫌いの関連性。

この先生に教えてもらった印象的なもう一つの事。

「そうめんは、香水をつけてゆでてはいけません。」

先生のお友達がそうめんをご馳走してくれたのだが、そのお友達が香水をつけていた。
香水をつけたまま、そうめんをゆで、ゆでた後、水で洗ったにだろう、そのそうめんには香水のかおりがしっかりついていて、
先生曰く
「本当に、たべれたもんじゃ、ありません!!」

私はその教えを卒業して以来、うん10年ずっと守っている。
そして、そうめんをゆでる時にいつも思い出して笑うのだ。

香水の香りのするそうめんはどんな味?
ロッテンマーヤのように細くて杓子定規だった先生が、香水くさいそうめんを食べる様子を想像すると、大変不謹慎だが、笑ってしまうのだ。

先生に調理実習で茶碗蒸しやるからと頼まれて、運動場のバレーコートの脇で銀杏を拾ったなあ。臭かったなあ

「下手くそな金管黄昏渡り廊下」

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