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とある少女のロールモデル

海賊王に、俺はなる!という言葉に勇気づけられ、カメハメ波のポーズを練習し、忍者のように草むらを駆けることを目指した元子どもたちは、日本に限らず世界中に多く存在する。「アニメ名曲特集!」などお茶の間でよく見かける番組でも、必ずと言っていいほど、ドラゴンボール・ワンピース・ガンダムが取り上げられる。

そして、大人になってからはよく、少年漫画発のアニメを周囲から推されることが多くなった。「ワンピースを見てないなんて、損してる!」という風に。

おすすめされることには感謝しているが、いつも思う。「昔少年向けのアニメだと隔てられていたものなのに、急に大人になってなぜ推奨されるのか?」「なんで少女漫画の代表作は、ほとんど取り上げられないのだろうか?」と。
もちろん女性が少年漫画を好む傾向も近年上がっているように、男性だけが読むものとは思っていない。対象が分けられていても興味関心を他人が妨げる資格なんてない。
しかし、さらに思うのである。「もっと少年漫画を読めるようになっていたら、もっと教養が深まるのだろうか?」と。

いつかの私は、友達の漫画好きに影響され、頑張ってジャンプを読もうとした。Eテレでなく夕方6時頃はクラスの男子が好きなアニメを視聴するように努力した。
でも、あまり話が分からなくて、挫折した。こんな事を書いたら各方面から怒られそうだが、すぐ戦闘をするし、同じくらい強そうな女の子はあまり出てこないし、主人公もみんな、男子、男子、男子。10年前以上の私という少女は全く共感を得られなかった。

連載が始まって長い年月を経ても人気というのは、性別関係なくそれほどウケているんだろうなとは思いつつ、少女向けコンテンツでは”モテ””アイドル””可愛い”を求められる題材が多いように感じた。
逆にあまり男子から「ちゃお読んでるよ」など私の周りでは聞いたことはない。女子が男子の興味関心に触れることはある一方、男子が少女向けコンテンツに触れる人が多くなるのは、成人のファンということだけだ。
やはり、少女漫画はとっつきにくいのだろうか……?
私の唯一の救いがケーブルテレビだった。地上波では得られない海外ガールズの、大人びつつも等身大な友達とのいざこざ話。焦ったくも素直に、どう感情を表現すればいいのか、時に魔法使いや優等生の主人公が教えてくれる。子どもすぎず、かつ大人すぎない、媚びない”可愛い”を求められていない世界線が海外ドラマには溢れていた。

追記:TVではなく青い鳥文庫の『若おかみは小学生!』『黒魔女さんが通る』などアニメ難民だった小学校中学年以上の私にとっては、友達とのコミュニケーションツールとなりよき友として存在していたが、またしてもお茶の間の時間では枯渇するのであった

求められる少女像を感じていたことを私の代わりに言語化してくれた「女の子は本当にピンクが好きなのか」著書の堀越さんは”『プリキュア』でさえマザリング要素が時折盛り込まれている”とヒロインものや女児向けコンテンツに対して指摘する。ちょっと同感である。少女性・母性がなければ今度は恋愛ものが隙を狙ってくる。映画になれば恋をしろ、王子を見つけろ、純粋でいろ!とひねくれた子どもだったわたしには強迫観念的なメッセージを感じずにはいられなかった。
ああ、私もルフィのように仲間と手を取り合って世界を大冒険する、世の中の少女像を除いたヒロインものに早く出会えていたら、とたらればが止まらなくなる。

昔の私のように感じた人はいるのだろうか。
正直今のテレビ事情は詳しくは分からないが、女の子同士でも恋愛以外で語り合えるようなコンテンツが増えて欲しいと切に願う。(もしあったら教えてほしい、とても興味があります。なかったら、、、作るか、、、!)
女の子も、男の子も、従来のらしさを求められるだけのロールモデル以上に、ひとりの人間として未来を想像するべく、いろんな選択肢に触れられるような切り口を誰かに制限されてはならないということと、個人的には今以上に少女がリーダーとか、ロールモデルになり得る主人公の幅がマスメディアの間でも広がってほしいと思う。

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