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田舎のおばあちゃんのアイデアをビジネスにするには(第2章)

前回第1章では、現状分析を行いました。
今回は、解決策と今後の方向性を探っていきたいと思います。

おばあちゃんのアイデアと希望

過去の体験からの希望

「地元でとれるもの」を使った食品を作りたい、という想いをもっていて、近所で獲れるジビエ肉を利用した「肉まん」という商品がアイデアに出ました。

また、以前からいろんなもの(例:ハンバーガー)を作って近隣の大学に出張販売に行っており、そこでお金がなくて食生活に困っている学生を目にしたらしく、そんな彼らのために「できるだけ低価格で栄養豊富なもの」を提供したいそうです。
そこで「肉まん」なら若い人にも身近な食品なので、喜んでもらえるだろう、と。

そして、年中安定して提供するために冷凍加工したものを製造したい、とのことでした。

1つ目の疑問 「肉まん」と「低価格で栄養豊富」は両立するもの?

低価格で栄養豊富、ということの両立だけでも難しいのに、そこに肉まんという決定的な要素があるため、さらに難しい状況になりました。
ジビエ肉に栄養は(それほどでないにしても)ありますが、肉の加工〜食品製造の段階でコストが発生します。
もちろん食品衛生法に従うためのコストもあります。
そういう状況で果たして低価格が実現できるのでしょうか。

2つ目の疑問 大学生が「ジビエ肉まん」を選んで買う?

働いている大人ならいざ知らず、そもそも金銭に余裕のない学生が選んで買うでしょうか。しかも、変わり種の肉まん…
ま、私だったら目も向けませんね。そもそも選択肢に上がりません。
よほど安い金額なら別でしょうけど…

3つ目の疑問 肉まんを冷凍加工?

保存するために冷凍加工したい、ということですが、これって完全に製造者目線ですよね。
逆に、購入者の目線に立って考えてみます。
冷凍されている肉まんに魅力を感じますか?欲しくなりますか?
たしかに、有名中華料理店の肉まんをネット販売しているケースはありますが、それだけの特徴や技術を持っているから成立しているだけであって、簡単にマネできるものではありませんね。
肉まんが欲しくなる状況って、蒸し器の中で肉まんからホカホカの湯気があがっている時、じゃないですかね?(焼き芋も同じ)
その状況を見て「今食べたい」ってなるんであって、冷凍の状態から時間と手間をかけて温めてまで食べたいものでしょうか。
しかも冷凍加工するとどうしても味や食感が変わってしまいます。
(変わらない加工技術もありますが、専用設備が必要です)

さてどうしようか

ダメ出しするのは簡単です。
でも、おばあちゃんなりに一生懸命考えたアイデアです。
そこは尊重しないといけませんね。(尊敬してるし)

どうしてその結論にいたったのか一緒に考えてみる(探る)

学生に低価格で提供したい、という言葉が出ましたが、いろいろと探ってみるとそれより優先度が高いことがありました。

それは、地元の観光施設の食堂で提供したい、ということです。
そうなってくると、そもそもの前提が変わってきますね。

地元の観光施設で提供して一定の利益を出し、学生向けに低価格で出張販売すればどうかな?
と提案したところ、同意を得ることができました。
「低価格で」というのが最優先だとどうしても原価を下げていく必要が出ます。
そうなると、品質が下がったりして魅力的な商品から離れていきます。

むしろ今取り組むべき方向性は、価格に応じた高い魅力の提供だと思います。

商品アイデアの練り直し

肉まん、という商品アイデアがありましたが、原点に立ち返ってあらためて一緒にどんな魅力的な商品の可能性があるか考えてみました。

標高の高い山間地のため、量はさほど多くありませんが、美味しいお米がとれることに一定の評価がありました。
円安で価格高騰になっている今、小麦粉を使った商品に取り組むよりも、お米を使った方が地元の良さや特徴が出せるのでは?
とか、いくつかアイデアが出ました。

空前のおにぎりブーム

2010年代半ばあたりから「おにぎり」がブームになってきました。
私も最初の頃は「おにぎり専門店なんて儲かるんだろうか?」とか思っていましたが、一回試して入ってみるとこれが予想以上においしいんですわ。

素材や作り方(握り方)を変えるだけでこんなに味が変わるの?
握りたてのあったかいおにぎり、うめーーー!
とか、めっちゃ幸せな気分でした。
機械じゃなくて、人間が作ってくれた、って感じられるのもいいですよね。
しかも見栄えにもこだわっているから、SNSに載せたくなるし。
そりゃ、流行りますよね。

田舎のおばあちゃんはブームなんか知らない

このことを伝えると、おばあちゃんはポカーンとしてました。
「おにぎりがなんでそんな値段してるの?」とか
「都会の人は金持ちだねぇー」とか
感覚が分からないとこうなるんですね。

でも「近所のコンビニでもこれぐらいの値段だよ」とネットの画像を見せると、さらに驚いてました。
追い討ちをかけるように、コンビニがどうやって売れるおにぎり作りに取り組んでいるか、も伝えたところ、その仕組みがようやく理解できたようです。

高い原価で作ったから値段が上がった、という単純なものではなく、消費者のニーズが変わってきたためそれに応じた商品を作成して販売していることを。

おばあちゃんたちは、自宅の田畑で採れたお米や野菜を食べており、市場価格に左右された生活を行っていないので、衝撃的だったでしょうね。

価格は生産者ではなく消費者が決める

市場での価格は、需給によって決まります。
数量が固定の場合、ほしい人が多ければ価格は上がり、その逆だと価格が下がります。
おばあちゃんたちがやろうとしているものは販売数量に限界があるため、ほしい人(ほしくなる人)を増やせば価格は高く設定できます。
先に述べたように、大学生に提供したいから低価格に、ということを優先した場合は、かえって自分たちで価値の低下をすすめてしまうことにもなります。

むしろきちんと利益を生み出せる、ということはビジネスとして継続させるための重要な要素です。ボランティアや趣味なら別ですが。

購入者へどんな価値を提供できるか

価格に見合うだけのベネフィット

ようやく戦略を考える段階に辿り着きました。
なんといってもまずはベネフィットから、ですよね。

というところで、今回はここまでです。
次回第3章は、お客さんにとっての価値について考えていきたいと思います。

これもおばあちゃんの挑戦なので、いつになるか分かりませんが、こちらも頑張ってサポートしていこうと思います。
ま、失敗してもね。やらないよりはいいから。

参考にした書籍はこちらです。

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