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アンパンマン的様式美『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』|ダフネの映画日記

最近、気になる映画はできるだけ公開されてすぐに観に行くようにしている。家から映画館まで歩いて15分しかかからないので、料金の安いレイトショーに行きやすいというのもあるけど、一番の理由は、大きいスクリーンで観たいから。ゴジラ映画は、数年前に『シン・ゴジラ』で一気にハマってしまい、ハリウッド版が公開されるというので週末、IMAXスクリーンで鑑賞してきた。

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まさしくそんな感じ。ギドラ、モスラ、ラドンなどの大人気怪獣たちが出てくるのは予告画像で知ってたけど、やっぱりスクリーンに出てくると迫力がすごい。あれは劇場で見るべきです。

ストーリーをネタバレしない程度に感想をいくつか挙げるとするなら、ギドラの描かれ方が、個人的にすごく好きということかな。初登場当時の設定を意識した位置づけも嬉しかったけど、なによりぜーーんぶCGなのでとにかく動きが滑らか。スーツアクターが操る特撮のぬいぐるみっぽさも好きだけど、やっぱりCGだと鱗の一つ一つまで精緻に表現されるので、ドラゴンっぽさが違う。アニメゴジラ3部作のギドラもCGアニメーションだったけど、でっかすぎて首しか出てこないビックリ仕様なので、手足胴体全部見えた今回はすごく満足。

あとは、音楽。ゴジラも、モスラもきちんと見せ場に彼らの音楽が使われていて、「そうだよ、これこれ!」という感じ。観おわった後に「ゴ・ジ・ラ!!ゴ・ジ・ラ!!」と口走りそうになる。全然ジャンルが違うけど、その興奮は、空前のヒットを飛ばしたインド映画『バーフバリ』を観おわったときとほとんど同じような気がする。

まだご覧になっていないゴジラファンの皆さま、ぜったい劇場のスクリーンと音響で見るべきですよ。ついでに、バーフバリファンの皆さまも。

様式美的エンタテインメント

劇場から地上に降りるエレベーターには、おそらく同じシアターでゴジラを鑑賞していた人たちがすし詰めになって、静かに1Fへの到着を待っていた。男子高校生の2人組、若いカップル、子供連れ、わたしと同じような歳のおひとりさま女性、頭の中で品評会をしているのか難しげな表情を浮かべる壮年の男性。様々な人がひしめく、その異様な静けさの中で、わたしはゴジラの人気について考えていた。

だって、ゴジラを観たことがある人ならば、ストーリーはともかくとして、結末はなんとなく、わかっているのだ。それはまるで、一度は劣勢に立たされるも、バタコさんの命中率9割越えのスーパースローによって顔を入れ替え、ばいきんマンを滅するアンパンマンのように。様式美、いわゆる「お約束」というやつだ。

それでもわたしたちは見てしまう。結末ではなく、その過程がいかに描かれ、ディティールがいかに描き込まれているかに、興味があるからだ。

予想を超える「何か」が見たい

わたしには、ゴジラ以外にも、結末がなんとなくわかっていながらも、つい観てしまうものがある。それは、異星人襲来系・気候大変動系のパニック映画だ。

代表的なもので言えば、2005年に公開された『宇宙戦争』だろうか。スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演というハイパービッグネームが並ぶも、なぜかクソ映画と名高い。スピルバーグ作品ということでSF的描写が強く期待されていたにもかかわらず、いちパニック映画で終わってしまったということが酷評の主な原因らしかったが、わたしはこの映画が大好きだ。

なぜだかわからないが、異星人襲来とか気候大変動みたいなことで地球がパニックに陥る映画の主人公は、往々にして妻や子供と上手くいっていない。別居中か、離婚調停中か、離婚していて子供とたまに会う、そんな感じ。そして、久方ぶりの親子の触れ合い......のときに限って空前絶後のパニックが始まり、命からがら何とか生き延びて、家族の絆を取り戻すという展開だ。

もちろんそういうパニック映画ばかりではないが、冒頭で妻と口論する主人公っぽい男が出てくれば、なんとなく結末を予測できるようになった。

それでもわたしは観る。大筋のストーリーは、予想できていたって、別に良いのだ。わたしが見たいのは、人々がパニックに陥ったときに曝け出される人間の本性や、太刀打ちできない未知の力に立ち向かうときの知恵の絞り方、パニックが収まったあとの人々の受け止め方。向かう結末がわかっているからこそ、そういうディティールの部分をじっくり干渉することができるのだから。

ははあ、ばいきんマン。今回はそういう作戦で来たか。

(Photo by Mathew Schwartz on Unsplash)

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