- 運営しているクリエイター
記事一覧
「4seasons]
その日は朝から暖かかった。
駅の改札で待ち合わせをしていると、燕が目の前を横切った。行き先は壁側に据え付けられた巣だった。よくこんなところに巣を作るものだと感心してしまう。
「都会の特権だよね」
隣に、自然な仕草で立った友人が言う。待ち合わせの時間から十五分遅れのことは、一切口にしない。
「燕の巣を見られることが?」
時間のことは言ったところで無駄だ。そう思って冗談のような会話を続ける
「みなもとかえらず」
ゆらり、ゆらん。
水面が揺れる。それは、何も見えない真っ暗な闇が、かろうじて水なのだとわかる瞬間。
川沿いのコンクリートでできた塀を降り、わずかな足場に腰掛けた。肌に触れる水が心地よかった。さらさらと流れていくのがわかる。
川の流れは穏やかだった。水に映った街灯の光が潤む。
私は何も考えずにこうしているのが好きだ。川と海の境目の、波打つ前の水面は安心して見ていられる。自分を守る隠れ家のよう