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星の王子さまを読んでムカついたこと

英語多読の練習として、IBC対訳ライブラリーのシリーズを何冊か読んだが、星の王子さまを読んで不快な気持ちになったのでそれについて短く書く。

一応ネタバレを含むので注意。

王子さまは子供で、我儘で癇癪持ちである。私がこういうキャラクター自体が嫌いというのもあるが、最も違和感があったのは別のこと。

物語に登場する「王さま」、「うぬぼれ屋」、「のんべえ」、「実業家」、「点灯夫」などのキャラクターについて、彼らが強迫的な行動を取り続ける理由は特に説明されない。そして有名な「大切なことは目に見えないんだ」というキツネのセリフ。この2つが並んだ時、私の中で王子さまは大切なことを認知しないまま相手を評価し哀れむ嫌な存在になってしまった。

キツネのセリフは文脈的に違うことを言っているのだろうが、目に見えない大切なことを教えるために例示された人達が、それこそ大切なことに触れられず表面的な印象だけで馬鹿にされるようなストーリー。

子供の純粋さを持ちあげ、大人っぽい考えや言動を下げる話は受けが良いのだろうが、大人っぽさの表面的なものだけを取り上げ、最も汚く見える部分だけを抽出して、大切なものを無視したまま馬鹿にする態度は物語を通じて終始不快だった。

これは私の意見だが、大人っぽさに縛られて不幸に見える人達は、子供の純粋さでは絶対に救えない。一見すると馬鹿馬鹿しいと思われるしがらみを取り除いても、おそらく幸せになれない。多くの人間は、それこそ他人から理解されない依存先を持つことで安らぎを得ており、それを良くないこととして批判する人間は相手を不幸にするだけの害悪で、他人を幸せにすることは出来ないのだ。

こういったいわゆる「真の喜び」を押し付けようとする人間はリアルでも多く、本当に罪深く厄介な存在だ。そういう意味では価値観の合わない人と出会っても黙って立ち去るだけの王子さまは人間が出来ていると思う。

物語の雰囲気を楽しめたら良かったのだが、とりあえず一読して不快感だけが残ったという感想。

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