とある休日の昼下がり
今週末も気晴らしに名取に向かった。そう、コロナでタブーとされている越県をしたのだ。観葉植物とハーブを見た後、マックに行き、そして銭湯に入り、それなりの休日を一人で過ごしていた。車内はダウンロードしたトーク番組を流し、鬱蒼と茂る不安をコメンテーターが話しているのを聞き、さらに死にたくなる。それは自虐行為でもあるが、現実に真摯に対峙する大切な時間。自分が置かれている環境は今後どのように変化していくのか。それを問いかける時間なのだ。
帰りにふと小腹がすいた。
「ラーメンでも食べていくか……」
道すがらのラーメンショップによると、けだるい足取りで店内に向かう。味噌ラーメンを頼むと、店内の漫画に目を通した。いつもの平凡な休日が終わろうとしていた。ぶしつけに「お待ち!」とラーメンが置かれる。またもや平凡な味に舌鼓を打つと、調理場から一人の従業員が向かってきた。
「先生ですよね」
マスクをとって満面の笑みをしたその若者は微かに面影のあるいつかの少年だった。
「誰?〇〇?」
「そうです!覚えてくれていましたか」
「ああ、久しぶりだな。元気か?」
「はい。先生は?」
「いや、あの時から先生はやっていないよ?」
「あの時?ああ、震災は大変でしたね」
もはや僕らの中で「震災」は「あの時」なのだ。それで通じるほど共通の出来事。
「震災で学校がしばらく休みになって、それから仙台の調理の専門学校行って、近くのラーメン屋で就職したんです。でも、潰れちゃって、ここに来ました。」
「そうか……大変だったな。自分も震災後は色々やって、今も貧しいながら何とか生きているよ。一人になっちゃったけどね」
「そうですか……」
二人の間に沈黙がくる……。しかし、久しぶりの再会にお互い笑顔がほころんだ。言葉は何もない。話したいことはたくさんあるし、積もる話もある。
「みんなとは連絡とっているのか?」
「いや、散り散りになって今は一人としか連絡とってないですね」
「…そうか」
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「また、来るわ。」
電話番号を渡して「生きてるよ、って拡散してくれてもいいよww」
「分かりましたw」
今日はいい一日になった。心が温かくなった休日はゆっくりと暮れていった。
福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》