リアリティってなんだよ

 リアリティの話をするとき、じゃぁ現実にある事を詳らかに書けってことかよ!? と言うのはやや屁理屈臭い。
 とは言え、人が言う「リアリティ」って実のところ薄らぼんやりした存在だ。

 勿論、創作に対して説得力を持たせる必要とか、現実っぽさを感じさせる必要がある。
 例えばファンタジー世界の魔術師の話だとしても、話が薄っぺらくなったらそれはもう「リアル」ではない。
 卓越した作家はそれを理解しているし、それ故、人に違和感を感じさせずに物語世界に誘うのだ。

 ここでは別に、如何にしてリアルさを増すかなんて話はしない。しないどころか出来ない。
 だけど、批判ありきの人物の言う「リアル」ってナンだろうとは思う。

 着ぐるみでやってた怪獣映画を「リアルじゃない」と腐す人はいて、そして最近のCGで描かれた怪獣を「リアルじゃない」と腐す人も居る。
 お前ら、リアルで怪獣見たことあるのかよ!?

 アニメを舞台化させた映像を断片的に見せて、「馬鹿な事をやっている」的な笑いの取り方をする人が居る。まぁそう言うのは下品な人間と相場が決まっているが。
 例えば弱虫ペダルとかウマ娘のミュージカルで快走するシーンとか、ちょこちょこネタにする人間がいる。
 舞台というのは、幕開けから少しずつ人を魔法に掛けていくものだから、通しで見ていればそのシーンはずっとリアリティをもって見られている。
 リアルである事とは、つまりそう言う事だ。
 人を如何にして魔法に掛けるかということだ。

 魔法が足りないとか、方法が間違うというのはあるかも知れないが、全ての創作はこの魔法があるから成り立っているのだ。
 その魔法を引き剥がして現実とは違うから滑稽だと批判するのは、批判に見せかけたヘイトでしかない。

 時々、恋愛漫画を指して「リアルな恋愛じゃない」とか、小説を「安っぽい描写」と馬鹿にする人が居る。
 俺は本物を知っているんだぞと言いたがる人は居る。
 しかし、人々は本物なんて本当に求めているのだろうか?

 虚構に救いを求めている人が多数の世の中で、「これが世の中の真実なんだ」と高笑いしながら突き付ける話なんて鼻に付く。
 勿論、そういうのが「リアルだ素晴らしい」と評価する人も居る。まぁ「俺は違いが分かるから」と言えば好きにすればいい。

 世の中、色んな趣味趣向がある。
 リアル志向で得意気になる人も、それこそがバリューであるし、全くの虚構の恋愛でもそれで心を動かされるのが嬉しいというのもバリューである。

 偽物の肉でも人々を満腹に出来ればそれは素晴らしい仕事だ。
 本物の肉で素材の味を楽しんで貰っても結構だ。素材がずっと旨いならそれでもいい。
 将来フェイクミートしかなくなったとき、現実の野生の肉の臭みや味にどれだけの人が耐えられるだろうか? そういう時代になったとき、一番ウケるのは本物の肉ではなく、"本物志向"の肉である。それは臭くもないし変な味もない。

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