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未治療FTM「どうせ俺はメスなんだよ」

未治療FTMの20代の僕は職場で
カミングアウト後も
50代男性からのセクハラを受けている。

照明を落とした夜のリビングにひとり。
「どうせ俺はメスなんだよ」
タバコの煙をくゆらせながら呟く僕の声さえも
それに追い打ちをかけるように、
細く、嫌という程「女」だった。

僕は望んで未治療なのではない。
治療を受けたくても、
いつ受けられるか分からないまま
何ヶ月も待たされている。

当然、不本意ながら
100パーセント女性の体を持っていることは
それだけでも耐え難い苦痛だ。

その“女性の体”に
同性であるはずの男が、性的対象として、
興奮して、近付いてくる。

想像できないし、想像もしたくない。
それが妥当な感想だろう。

気持ち悪い。悔しい。恥ずかしい。怖い。憎い。
思いつく負の感情すべてを並べても足りない。

トランスミサンドリー(トランス男性への嫌悪)が
多くの人の心にあることなら
いじめられた中学生時代のおかげで
バッチリ想定内だった。

しかしその逆などは、
まず想定していなかったのだ。

未治療とはいえ、
トランス男性だと明言している、
化粧していない、男言葉の、髪の短い、
かなり男らしい服しか着ない僕に、
興奮するアブノーマルな変態が存在するなどとは。

嫌われ罵詈雑言を浴びせられたほうが
どれだけましだったか。

終わりの見えない未治療の期間、
どう乗り切ればいいのか。
まだ頭が真っ白だ。

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