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「コロナ禍でのメンタルヘルスケアが重要な理由」

1はじめに

新型コロナウイルス感染症の拡大にともなう感染不安や行動変容は、これまで私たちが経験したことのない種類のストレスをもたらしています。
この記事では”コロナ禍におけるメンタルヘルスマネジメント”と”在宅ワークが引き起こすメンタルトラブル”を中心に管理職の方に向けてまとめています。

2コロナ禍におけるメンタルヘルストラブル

感染そのものへの不安はもとより、業績急落などによる不安や勤務形態の変更による緊張などが、”自律神経系”を乱し心身の不調を引き起こします。これは、誰にでも起こる本能的な身体反応です。自律神経系とは、交感神経と副交感神経から構成される、体温や心拍など体の機能を調整する大切な神経です。

ただ、今回の新型コロナウイルス感染をめぐる状況は好転が見込めず、緊迫した状況が長引いています。そのため、心身の回復に欠かせない副交感神経の働きが弱くなってしまい、疲労感や頭痛、うつ症状などを引き起こすことがあるのです。

新型コロナウイルス感染症の流行による心理的影響について、多くの機関が調査・研究に着手しています。厚生労働省により行われた調査によると、メンタルヘルスの状況に次のような変化があったとのことです。

・神経過敏に感じた
・そわそわ落ち着かない
・気分が落ち込み、気が晴れない

このような心の状態を多くの人(多い時期で63.9%)が経験したとの結果でした。(参考:厚生労働省社会・援護局『新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果概要について』)

3在宅ワークとメンタルヘルス

在宅ワークによるメンタルヘルストラブルと管理者に求められるラインケアには、次のような例が挙げられます。

トラブル1: 「家庭内ストレス」
在宅ワークでは、近所の騒音が気になったり子供に話しかけられたりして業務を中断することがあります。


ラインケア:
・日中にできなかったことを深夜に行うなどの負担を負っていないか
・出勤する曜日を増やし、在宅業務と分けるのはどうか
在宅環境と業務内容を共有し、過度な負担がないか配慮する必要があります。

トラブル2:「生活の乱れ」
通勤以外に運動する習慣がない人の場合、根本的に運動不足に陥ります。日光に当たる時間も減るので、睡眠リズムを整えるセロトニンという神経伝達物質が不足します。


ラインケア:
・睡眠不足や生活の乱れは、在宅ワークでは起こりやすい
・だらしないという評価はしないので、相談してほしい
勤務時間調整を提案し、自律神経を整える必要性を伝えることが効果的です。

トラブル3:「自分の価値を感じない」
オンラインに適さない業務の場合、仕事量が減ることは仕方がありません。ですが、自分自身に価値がないと思い込んで重度のメンタルトラブルにつながることがあります。


ラインケア:
・業務そのものが在宅向きではない
・在宅でもパフォーマンスを発揮できるよう努めるのは会社側の課題
従業員が自己責任を感じることがないよう、上記のような言葉がけが必要です。

このように、在宅ワークによるメンタルヘルスケアが急務となっています。場合によっては医療機関に相談する必要性があることを伝えましょう。

在宅ワークにおけるメンタルヘルスケアでは、従業員それぞれが自律的に”セルフケア”を行うよう指導することも効果的です。また、ラインケアでは家庭環境や個人情報にも配慮した”個別の対応”が必要不可欠です。

4管理職自身が潰れないために

経営者や管理職、人事担当者などマネジメントする側が、心身を維持することにも目を向けなければなりません。そのためにできることをみてみましょう。

・管理職は、本来の管理業務のみを行う
日本企業の管理職はプレイングマネージャーと呼ばれ、日常業務も当然のように行っているケースが珍しくありません。しかし、コロナ禍での戦略変更や勤務体制変更、従業員のケアなど多忙を極めている事実は言うまでもありません。本来のマネジメント業務だけに絞る方法を会社に相談することが負担減につながります。

・社内報などで、管理職の業務を伝える
残念ながら、ほとんどの一般社員は、管理職がマネジメント業務とプレーヤー業務を兼任することを当然としています。管理職の抱える業務内容や、どのようなコロナ対策に追われているかをオープンに示すことで、部下に頼りやすい構図をつくりだせるかもしれません。

・部下に任せる
時代背景とともに若い人材のタイプが次々と変化します。若い人材の退職を阻止したいがために、負担のかかる業務を任せられないという状況があるかもしれません。一方で、給料などの待遇面よりもやりがいを重視するタイプの人材も増えているといわれています。様子を見て判断するよりも、ストレートに仕事を任せても大丈夫か聞いてみるのも選択肢の一つです。

5異例のピンチを成長チャンスへ

異例の事態への対策に、少しでも前向きに取り組めるような捉え方をいくつか例を挙げます。ピンチこそチャンスであるという視点を持つことで、ストレスに強くなるといわれています。

・セルフケアとラインケアを整える機会に
社内の衛生環境がしっかりしていて健全な従業員が増えれば、企業価値が上がります。不況と人材不足の解消にも役立つチャンスです。

・レジリエンス力の高い組織へ
どんなに対策を講じても、業績悪化という結果を避けられないかもしれません。”努力が天災で白紙になることがある” と気づかされました。ネガティブな状況でも、パフォーマンスを維持する力や現時点での最善を尽くす力を養う時期だと捉えると良いでしょう。悲観的な人にとっては楽観的な考え方を練習するチャンスでもあります。

・アナログ組織からの脱却
これまでITに抵抗があり、アナログな方法で仕事を進めていた人も、多くのビジネスツールの使い方が身についています。資料の共有からオンラインミーティングなど、今後の業務円滑化につながる要素ばかりです。慣れるまでは管理職側も戸惑うかもしれませんが、中長期的にはとても意義のある組織の進化をもたらします。

まとめ

今回は、新型コロナウイルス感染症の蔓延による、メンタルヘルスケアなどを紹介しました。管理職への負担があまりにも大きいという現実は、日本の企業に突きつけられた課題です。

不安定な情勢の長期化が想定されます。厳しい状況ではありますが、コロナ禍に対応したラインケアを見直すことが急がれます。また、在宅ワークの浸透は、働き方の多様化を促します。組織に合った形態を求め、さらに模索し続ける必要があるでしょう。

前例のない状況に置かれています。立場に関わらず、すべての従業員がストレスを抱えているといっても過言ではありません。自分一人だけで悩まず、組織全体で相互にメンタルヘルスケアに目を向けていくことが大切です。

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