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秋色

「こっちのほうがよく見えるよ」って手をとってひっぱられた。夜風にあたって冷たくなった私の手があなたの手に包まれる。あったかい。

紅葉のライトアップにはたくさんの人が集まっていて、真っ赤なもみじが大きな木のすべての枝に咲き誇っている。

夜の闇のなかに浮かびあがるやわらかな赤色はとてもきれい。それを眺めるあなたの目にも、私の目にも赤色が映し出される。寒さを忘れて見入ってしまう。

次々に流れてくるたくさんの人に押されながら、あなたにもっと近づいた。

ときどき少し強く風が吹くけど、大きなあなたの横にいればそんなに寒くないよ。心もあったかい。

帰り道、二人でこんな話をした。

「もうすぐクリスマスだね」

そう、もうすぐクリスマスだ。二人で過ごすはじめてのクリスマス。どこに行こうか、何を食べようかなんて話しながら私は思ってたよ。あなたと一緒に過ごせるだけでいいからね。でもいつも手は繋いでほしいな。だってとってもホッとするんだよ。

ずっとそばにいてね。


#短編小説 #掌編小説 #紅葉 #恋人



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