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夢で会えたら

彼の胸に顔を埋めながら、何度も叩いた。私が一番安らぐ場所だった胸を「どうして」って泣きながら叩いた。

浮気されて捨てられるときの最後の夜はこんなふうに泣いて怒るものなんだろう。ドラマとかでよくあるじゃない。そんなことをなんとなく頭の中で思っていて、それを行動に移しているだけのような気がする。ほら、泣いて叩いたほうがいいよって。

叩く手の加減が分からなくて、少し強めに叩く。

彼が苦しそうに「ごめん」と言った。

きっと彼は責められたかったんだと思う。私に泣きながら責められて叩かれて、そうしたらやっと彼は罪悪感を少し軽くできる。そんなことを思いながら涙を流した。

この流している涙は本物なのに、どこか用意されたシナリオ通りに振る舞う自分を離れたところから見ている。

こういう感じが彼の言う「君の気持ちが分からなかった」に繋がったんだろうか。

「あんなに俺のこと愛してくれてたんだ」って、あの日からしばらくして言われた。泣いて彼の胸を叩いて、だから愛してた。そういうことになるんだ。

愛してたかどうかなんて、今となってはどうでもいい。彼の胸で安らげるのはもう私じゃなくてあの子だから。

でも夢でもいいから会いたいと、枕の下に忍ばせた彼の写真を今日もまだ無くせない。目が覚めたとき、涙で頬が濡れているのもシナリオ通りなのかな。この物語はいつ終わるんだろう。

会いたい。



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