ワインで思い出す彼。
少し大人の恋でした。
赤いスカイラインに乗っていた彼が連れていってくれたのはテーブルの周りをぐるりと囲むワインセラーがあるレストラン。大きな窓があって、陽の光がキラキラと射し込んでくる店内。すごく品があって、こんな素敵なお店を知ってるなんて彼はとっても大人だなってドキドキしたのを覚えています。
大学生だった私の恋のお相手は7つ年上の男性でした。
とてもとてもかっこよかった彼は笑うと目尻にシワができてね、その優しげな表情もまた魅力的でした。歌もすごくうまかった。今まで出会った男性の中で一番歌が上手な人でした。
実はこの彼、私の友人の元彼でした。友人といってもそこまで親しいわけではなく、親しい友人の友人くらいの人でした。この彼女は言ったんです。
「あの人はやめたほうがいい」と。
「最悪」とも表現していましたね。でも一目惚れに近かった私はそんな忠告を気にすることなく恋心にあふれていました。
お付き合いするようになった過程についてはちょっと暴露するにはまた私の無茶な性格をお伝えしないといけないので内緒です。ともかくお付き合いは9ヶ月くらい続きました。
私はこの彼と待ち合わせするたびに、周りの女性から注目を浴びていました。赤いスカイラインから降りて、手をあげて私のほうに歩いてくる彼。かっこいいなって彼を見る女性たち。その視線はおのずと私に向かいます。
ちょっと自慢でした。いえ、かなり自慢でした。やっぱり気持ちのいいものです。あのかっこいい彼はあの子の彼? っていう目が向くのってね。
そんな彼と付き合っている間によく思い出していた友達がいます。中学のときの友達で今はもう連絡先もわからないんですが、彼女が当時、ものすごくかっこいい男の子と付き合っていたんです。彼女はいつも自分が彼に不釣り合いだと悩んでいました。せっかく両思いなのにいつも不安がっていてしんどそうでした。
釣り合うとか釣り合わないって言葉を使うとちょっと外見的な要素が強いような気がするんですが、そういうのってどうなんでしょうね。男性はね、すごく魅力的な女性を連れていると自信につながるのかもしれないけど、女性はカッコよすぎる男性が彼氏だと他の女性に取られないか不安になりがちだと聞いたことがあります。分かる気もします。
話は戻りますが友人が「最悪」と言った理由は別れるころに分かりました。たぶん、なんていうか、自分自分という人だったんだと思います。彼女という存在に重きを置かないというか、自分の生活、自分の付き合い、自分の趣味、そういうのがいくつもあって、その最後のほうにちょこんと彼女がいるような、そういう生き方をしている人でした。
かっこいい人って彼女を大事にしなくてもいつでも女性が寄ってくるからそんな感じになりがちなのかもしれませんね。逆に考えると誰かを心から愛する経験がなかなかできないのかも。
その彼女は彼が自分をほとんど見てくれないことが不満だったんだと思います。それが「最悪」という描写になったんでしょう。
お付き合いが終わるころ、彼の環境が変わりました。以前に私が就職して、まだ学生だった彼と別れてしまった話を書きましたが、この彼はその逆パターンです。彼が就職したんです。
やりたいことのたくさんあった彼に仕事まで加わったら、私の居場所はなくなったように感じました。寂しがりの私は結果的にはうまくやれなかったです。別れてからもたまに会ってたんですけどね、私と別れたあとすぐに新しい彼女ができてました。その人と結婚したんじゃないかな。
彼は今は50歳くらいですね。ロマンスグレーになってるかもね。
この彼がね、言ったんです。「女は顔じゃない」と。この類のセリフを男性から言われるのは2回目です。1回目に言った男性はあきらかに私に向けて言ったんですが、このワインの彼は一般論として言いました。
「女は顔じゃない」「外見より内面」は褒め言葉ともとれるように思いますが、言われたほうはやっぱり褒め言葉とは感じない微妙な気持ちが残ります。何十年経っても覚えているくらいですからね。ちょっと曲者の言葉ですよね。
1回目にこの言葉を言われた話はこちらです↓
「性格はちょっと難ありだけど、やっぱりすっごく可愛いな」って言われるほうがうれしいのかな? ってちょっと想像してみました。
一度は言われてみたいかも。
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨