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クリスマスケーキはおあずけで。

「ひとくち、ちょうだい」

君がそう言って、僕のいちごショートケーキにフォークをサクッと刺した。ひとくち掬って口に運んでふわっと笑う。いつもそうして僕のケーキをひとくち食べるんだよね。そしてお決まりの言葉が続く。

「ほら、私のもひとくちあげるよ」

そう言って君は僕のほうに自分のお皿をちょっと押して、ブルーベリーケーキの先っちょをこっちに向ける。

「いっぱいブルーベリー乗ってるから、ちょっと多めのひとくちでもいいよ」

そこまで僕は君のブルーベリーケーキが食べたいってこともないんだよ。だって君はケーキが大好きだろ。だから君が食べたらいいよ。そう思って僕は端っこを少しだけフォークで掬う。

「遠慮しなくていいのに」

言葉とは裏腹に、うれしそうに君がふふふと笑う。僕もふふふと笑う。

「クリスマスはどんなケーキにしようか? やっぱり白いのにイチゴの定番のがいいのかなぁ。木のやつ、ブッシュドノエルだったかな、ああいうチョコのも興味あるよね。んー、どうする? どっちがいい?」

ワクワクした表情の君がかわいくてね、僕はどっちでもいいよ。君が好きなほうでいいんだよ。ケーキは君の得意分野だろ。そう思ったけど今年はね、ちょっと事情が違うんだ。

「んーでも、今年はホールじゃなくてショートケーキがいいかもね」
「え? どうして?」
「だってほら、二人でホールは大きいでしょ。甘いのの食べ過ぎは良くないよ」

そう言うと君はちょっと考える顔をしてフォークを持つ手を空中で止めた。視線はふわふわ空を見てる。数秒の沈黙。それからまたケーキに視線を落とし、フォークを優しく刺した。ひとくち掬ってゆっくりと口に運ぶ。「あー、やっぱり美味しいのになぁ」って言いながら残念そうに、でもうれしそうにクスクス笑う。

「クリスマスぐらいって言いたいけど、そうだよね。我慢だね」

そう言ってお腹をゆっくりさする君。予定日はもうすぐ。

「ねぇねぇ、じゃあさ、クリスマスはどんなご飯にする?」

これまで以上に食いしん坊の君とのおしゃべりはとっても楽しい。来年のクリスマスは赤ちゃんと一緒にケーキを囲もう。あ、まだ赤ちゃんにはケーキは無理だけどね。

ケーキの最後のひとくちを残念そうに、でも幸せそうに口に入れた君が愛おしい。



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